劇場公開日 2017年12月1日

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「何を言いたいのか分からない」鋼の錬金術師 kikuchiyoさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0何を言いたいのか分からない

2017年12月2日
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悲しい

原作既読、アニメ未視聴です。
家族の持っていた漫画を二、三回借りて見ただけなので、
そんなに思い入れや期待もなく素直に見れるだろう、話題の実写化だし、CGも凄そうだしと軽く考えて見に行きました。
凄く後悔しました。憤りすら感じます。

私は鋼の錬金術師の一番いいところは、キャラクター達の関係性や人間性だと思っています。
登場人物が凄くいい人たちで、でもみんなそれぞれ重い罪とか暗い過去とかを持っている。
そんな人たちが、運命的に凄く暗くて辛い状況に何度も落とされるけどそれでも負けずにと支え合い、助け合って、時には発破をかけて乗り越えていく。
そこが、ハガレンの本質というか、感動させられるところだと、思っていたんですが
今作はその部分がすごく薄いです。
ストーリー上のイベントをなぞっているだけの薄っぺらい映像が延々続きます。

本当に、人間関係が一つも見えてこないです。
シリアスなシーンですら、胸にくるような演出はなく、ただキャストが怒鳴ったり泣いたり驚いた顔をしているだけ。
その背景も、重みも、その人の性格すらも見えてこないです。
例を挙げると
大佐は鉄仮面で情緒不安定。周りから信頼されているような人間にはとても見えず、何考えて居るのか伝わってこないのに無駄にシーンを消費する。
ウィンリィは事件の当事者であるエドとアルの問題に、ズカズカ入り込んでは引っ掻き回していく。(結果、なんでそこに居るの?状態になる)
そして中尉。大佐に付き従って、何か起こるたびに一々呆然とする。1人じゃ何も行動しない、決断しない。
特に大佐と中尉が酷かったです。エドとアルを見守るような大人で格好いい2人はどこに行ったのか……。

あとは、色々位置関係がおかしかったり、最初強い演出がされていたラストはあまりにもあっさり死ぬし、不自然な状況が多すぎて、笑ってしまいました。
顔のアップが後半増え、最初の大立ち回りが嘘のようにCGは雑になり、アクションや悲鳴は安っぽく、雰囲気も緊迫せずに、結局何も伝わってこないまま音楽だけがどんどん壮大になっていく痛々しさは凄まじいです。

原作の序盤を扱うんだったら命の重みとかが題材になると思うんですけどね。
全部アルのためアルのためだと、命の禁忌や錬金術の意味そっちのけで兄弟間の愛情がいかに深いかを説くような、そんな映画です。

勿論いいところもありましたので補足します
●最初のCG←ここだけならハリーポッターと張り合ってもいいんじゃないかと思いました。
●山田さんの、激痛をあじわっている時の演技
●美術スタッフさんのお仕事(軍服、セット、小物類が美しかった)
●ラストの色気、物腰、余裕感
●アルのCG
●気持ち悪さと不気味さの演出。なんどかゾッとしました。
●真理のCG表現も良かったです。人の形をした白い物体をこう演出するのかーと感心しました。
●映像美。街並みや色調なども抑え気味でかつ綺麗でした。
以上

kikuchiyo