劇場公開日 2017年2月25日

「どこにもぶつけられない悔しい気持ち、どうしてますか?」彼らが本気で編むときは、 セロファンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0どこにもぶつけられない悔しい気持ち、どうしてますか?

2021年5月3日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

LGBTや育児放棄等の重めのテーマですが、重くならずに静かに泣けて、優しくなれる映画でした。
まず、リンコさんが良かったです。心と体の性が異なる為に子供の頃から辛い目に合ってきましたが、そんな悲しさや悔しさを乗り越えてきたからこその優しさが滲み出ていました。演じる生田斗真さんもトランスジェンダーという難しい役どころを違和感なく自然に演じています。
そしてトモちゃんも素晴らしかったです。家で一人コンビニおにぎりを食べる場面や、タンスの洋服を破って嗚咽する場面、泣けました。本当は寂しくて仕方が無くて、常に母の愛を求めているのに、外ではそんな雰囲気を微塵も出さず淡々としています。複雑な環境で生きる11歳という微妙な年頃の少女を柿原りんかさんが好演しています。

この物語には、色々な母親が出てきます。子供を放り出し、女としての自分を優先しようとする母。自分の価値観を押しつけ、子供本来の姿を受け入れようとしない母。自由奔放ではあるけれど、ありのままの子供を受け入れる母。夫に捨てられた虚しさを娘に見透かされる母。血の繋がりは無いけれど、精一杯の愛情で子供を包み込む母。どれが良くてどれが悪いというのではありませんが、子供にとってはかけがえのない大きな存在である事に変わりは無いのだなと思います。

LGBTという言葉。昔に比べたら浸透してきているのだとは思います。私も理解しているつもりでしたが、‘つもり’であった事に気付きました。
子供時代のリンコさんの描写。体育の授業が辛い。映像を見てはじめて確かにそうだよなと思いました。また、リンコさんが入院する事になった時、病院側の対応に憤るマキオ。なぜそんなに怒ってるの?と思ってしまったのですが、男部屋に入院させられるリンコさんの気持ちを思ったら確かにそうなるよな、と思いました。こうやって映像で見る事で初めてトランスジェンダーの方の辛さを感じる事ができたと同時に、相手の立場を思いやる自分の想像力の無さにも気付きました。

自分の体や世間の偏見に苦しむリンコさん。家庭環境をからかわれたり、母の愛を得られないトモちゃんの辛さ。自分がどんなに頑張ってもどうにもならない事で涙する彼女たちの悲しみや悔しさ。痛いほど伝わってきます。編み物に念を込めて燃やして昇華させるリンコさん達。上手く言えませんが、彼女たちの芯の強さや奥深さを感じました。

セロファン
セロファンさんのコメント
2021年5月4日

CBさん
コメントありがとうございます。
本当ですね。振り返ってみると映画から学んだなっていう事色々あります。

セロファン
CBさんのコメント
2021年5月4日

> 理解しているつもりでしたが、‘つもり’であった
> 映像を見てはじめて確かにそうだよなと

そうですよね。俺、ホント、この5〜6年、映画に教えられて来たと思います。

CB