劇場公開日 2016年6月17日

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「ぜんぜんコメディじゃないよ。ホラーだよ。」帰ってきたヒトラー 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ぜんぜんコメディじゃないよ。ホラーだよ。

2016年7月12日
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鑑賞方法:映画館

怖い

みんな、ヒトラーを見て笑ってた。仮装だと思って笑ってた。ずいぶん多くの人にインタビューをしていたけれど、あれは役者でもシコミでもなく、マジのドキュメンタリーってことだね。仮装した芸人が笑いもせずに、環境、貧困、移民問題、を聞いてくるもんだから、何故か可笑しくなってしまう。本気でそう捉えている。
時たま中指立ててた奴もいたが、あれは冗談であってもヒトラーを許せないだけで、彼にとっても仮装であるとの前提はかわりない。つまり、70年という時間は少なくともヒトラーをネタにすることを受け入れるには十分な時間が過ぎた、というわけだ。

「自分が扇動者なのではなく、群衆の意志を代弁できる人間なだけだ」的な台詞を言う。この映画は、先日の英国の国民投票にみられるポピュリズムの危うさが見事に表現されていて、恐怖を感じてくる。みんな、初めは威勢のいい煽りに喝采を浴びせるが、そのままノーブレーキで突っ走ってしまったときの恐ろしさに気づかない。
残念ながら、それに気づいた奴は精神疾患者扱いにされてしまう。

もう、際どすぎて際どすぎて、こっちは全然笑えない。みんな、上質なジョークだと思ってウケているのに、全然笑えない。冷めてはいないが、寒気がハンパないわ。

栗太郎