劇場公開日 2016年8月11日

  • 予告編を見る

「実写化請負人のジョン・ファヴロー監督の手腕が光る!」ジャングル・ブック よんしんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0実写化請負人のジョン・ファヴロー監督の手腕が光る!

2020年5月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

今やディズニーのヒット作請負人となったジョン・ファヴロー監督によるジャングル・ブックの実写化。

ジョン・ファヴロー監督とそのスタッフはアニメーションやコミックを実写化するときのアイディアとノウハウに長けていますよね。

67年のアニメ「ジャングル・ブック」はコメディ8割シリアス2割ぐらいの陽気で楽しいジャングルの動物たちの物語になっています。
主人公モーグリは幼稚で、育ての親のオオカミのことなんかいっさい忘れ、出会って数日のクマのバルーを(ジャングルブック2で)クマパパと呼ぶ始末。
そんなわがままモーグリにジャングルの心優しい動物たちが世話を焼きつつ振り回される、といったお話です。

しかし本作ではコメディ2割シリアス8割くらいの真逆の描き方をしています。
実写化にあたってのこのさじ加減が絶妙で、アニメをほぼそのまま実写化?したライオンキングとはまた違った手の加え方をしています。(こちらが先ですが)

アニメの「ジャングル・ブック」のディズニー・ヴィランズといえば虎の̪̪シア・カーンに蛇のカー、そして猿たちのボスであるキング・ルーイですが、カーとキング・ルーイはどちらかというとコメディ担当で、虎のシア・カーンもジャングルの動物たちは恐れてはいるけれど、圧倒的な強さを見せつけるわけではありません。

しかし本作のシア・カーンは圧倒的強さと恐怖を見せることに成功しています。
とにかくシア・カーンが怖い!
シア・カーンがしゃべるだけで周りが凍り付く空気感がうまく表現されています。

そしてキング・ルーイの恐ろしさ!
元はスキャットの楽しい楽曲「君のようになりたい」がキング・ルーイの持ち歌ですが、本作のシア・カーンとはまた違う得体のしれない恐ろしさのキング・ルーイが、とても歌なんか歌うような雰囲気じゃない場面で「君のようになりたい」を歌いだすそら恐ろしさ。
いや~、怖い怖い・・・。

映画化や実写化というと、元の作品との違いが賛否を生み出す要因になりますが、本作はアニメの「ジャングル・ブック」との違いを見るのが楽しいです。

基本的なストーリーは踏襲しつつも、演出を変えることでまた違う楽しさを見せてくれます。
残念ながら、アニメ版で何度も出るキャラがちょい役だったり出てこないキャラがいたりしてさみしいですが、さすがMCUを世界的ヒット作に仕上げた立役者のジョン・ファヴロー監督、「実写化」するにあたって何が最善なのかを知り尽くしています。

ジョン・ファヴロー監督といえば料理番組でも有名ですが、映画の料理の手腕もすばらしく、アニメ版の「ジャングル・ブック」のモーグリの性格や、ちょっとどうなの?といった部分も実写化にあたりうま~く調理しています。

唯一、頼もしいクマの相棒バルーが、ビジュアル変更と間抜けでちょっと頼りない存在になってしまったのが残念でした・・・。

よんしん