劇場公開日 2016年3月12日

  • 予告編を見る

「監督「Nippon」で映画を撮ってください」マジカル・ガール ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5監督「Nippon」で映画を撮ってください

2016年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

萌える

まず、本作で驚かされるのは、ジャパニーズPOPカルチャーが、スペインにまで波及していることです。
白血病で余命いくばくもないアリシア(ルシア・ポシャン)は日本のアニメ「魔法少女ユキコ」に夢中です。
少女にとっては、アニメの世界と現実は結構リンクしていたりします。
自分も「ユキコ」のような、かわいいフリフリの衣装を着てみたい。
少女のささやかな夢を叶えてやりたいと思うのは、彼女の父親ルイスです。
現在失業中。
お金もない。
明日の生活が出来るかも分からない。
しかも愛する娘は白血病。残された時間に、娘アリシアの夢を叶えてやりたい。
そこで父親ルイスは、ある行動を起こすのです……。

 この映画、新人監督カルロス・ベルムトさんの、人物の描き方、ストーリー展開がおもしろい。
本作で特徴的なのは、主人公は一体誰なのか?ということ。実に興味深い脚本であることに気づかされます。
 まずは「主人公はアリシアだ」と観客に思わせておいて、次に父親ルイスを描き、次にたまたま遭遇した人物に「ストーリーの流れ」そのものを、いわば「放り投げて」任せてみたりします。
一つの映画作品の中で、たったひとつであるはずの「主役の席」を、次々に別の人物が、交代して座ってゆくみたい。
いわば、主役のリレー方式。
主役のバトンを受け取った人物は、作品中で「そのシーンだけ主役」なのですが、次のシーンになると、主役のバトンをポイっと次の人に渡すのです。
これはなかなか面白い演出手法です。
 ただその分、観客にとって、いったい本作は誰を描いているのか? 何が描きたいのか? いまいち焦点がぼやけてしまう、という難点があります。
そこをあえて、面白がれるか? というのが、観客の懐の広さを試されているところなのでしょう。
新人監督カルロス・ベルムトさんは1980年生まれ。今年まだ36歳。
 日本の「ドラゴンボール」が大好き、とのこと。
 日本のポップカルチャーが、遠くスペインの地で、若き映画監督に大きな影響を与えているなんて。
ネットの影響もあり、文化の違いはあるものの、まさに世界は一つにつながっているんですね。
劇中で使われる日本のアイドルソング。演歌歌手になる前の長山洋子さん「春はSA-RA SA-RA」
こんな曲、僕も知らなかったなぁ~。
カルロス・ベルムト監督、一度、日本に来て、是非映画を撮ってください。
いつか、そんな日が来るのが楽しみです。

ユキト@アマミヤ