劇場公開日 2017年4月15日

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「ルールや制約にとらわれない自由な精神が生んだ快作」人生タクシー AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ルールや制約にとらわれない自由な精神が生んだ快作

2017年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

楽しい

ジャファル・パナヒ監督その人がタクシーを運転している。理由は語られない。カメラはダッシュボード上の回転式の台に設置されていて、監督が自ら向きを変え、車の前方の道路を映したり、後部座席の乗り合いの客をとらえたり、“自撮り”したり。乗客が「あなたパナヒ監督ですね!」と気づくドキュメンタリー風のやり取りもあるが、さまざまなハプニングが続発するので、台本はあるのだろう。しかし乗客たちの会話は作為を感じさせず、ひょっとしたら俳優ではない一般人もまじっているのではと思わせる。一応はフェイクドキュメンタリーの範疇に入るのだろうが、ジャンルに収まらない魅力にあふれている。

イラン政府に批判的な姿勢のせいで、映画監督禁止令を受けているが、「これは映画ではない」と題した作品を作ったり。スケールの大きなユーモア、制約や圧力をものともせず微笑でメッセージを発信し続ける姿勢に心を動かされる。

高森 郁哉