劇場公開日 2016年3月19日

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「うまく2時間にまとまってはいる。」僕だけがいない街 lylycoさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5うまく2時間にまとまってはいる。

2016年9月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

原作漫画とアニメ版のふたつの結末を先に知って観たぼくとしては、どうしてもそんな感想になってしまう。

この作品の本来のメインディッシュは小学生時代の事件で、現代のエピソードは時間SF的な導入とラストの大団円を演出するためのものだろう。映画版はその比重が逆転している。まあ、藤原竜也と有村架純をキャスティングしておいて、子役がメインというわけにもいかなかったのかもしれない。

ただし、人気子役を配した加代だけは例外で、彼女を虐待から救う話はよくできていたと思う。ただ、実はそうすることで「誘拐殺人犯から守る」という本筋は随分と薄味になってしまっていた。白鳥が嵌められていく経緯や、八代との緊張関係もほとんど描かれず、澤田のセリフ一発で容疑の目が真犯人向けられる急展開は大団円の興を削ぐ性急さだ。

ところで、個人的に原作で唯一食い足りなかったところがある。愛梨の描き方だ。加代に比べて愛梨とのエピソードはあまりに貧弱で、愛梨が悟の心の支えにまでなっていることにあまり説得力が感じられなかった。原作を読んでいた多くの人にとって、ヒロインは愛梨ではなく、加代だったはずだ。その点、映画版はちゃんと愛梨がヒロインとして機能していた。

だからこそ、原作ともアニメとも異なるあの三つ目の結末に、ぼくは悪い意味で唖然としてしまった。いまどき、あんな陳腐な悲劇のヒーローを見せられるとは思わなかった。映画版だけが説得力を持って描けたかもしれない、悟と愛梨との未来への明るい予感みたいなもの。まさか、それをあんな形で放り出してしまうなんて…。

lylyco