劇場公開日 2015年6月5日

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「彼の靴を履く=みんな違ってみんないい」靴職人と魔法のミシン きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5彼の靴を履く=みんな違ってみんないい

2020年11月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

But to truly a man, you must walk in his shoes.
「だが、彼の立場で考えないと
“彼の靴を履く”のだ」
⇒映画冒頭に語られる靴職人、先々代の主人の言葉だ。

映画のストーリーは、その後子孫たちによって面白可笑しく展開していくのだが、
冒頭のユダヤの言い伝え=【格言】が、鑑賞後にもじんわりと効いてきた。

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僕も、旅先で靴が壊れて困ったことがあった。
最近の靴はラバーのソールを接着してあるだけのお手軽製造だ。釘や縫い糸の出番がない。だから崩壊が始まると一気だ。
カバの口のようにパカパカ開く靴底を引きずり駅中のリペア屋さんへ駆け込む。申し訳なく汚い靴をなんとか治してして頂き、「こんな応急処置ではお金は頂けません」と固辞する店主としばし押し問答で語らう。
たくさんの人とたくさんの靴を、このご主人も見てきたのだろうなぁ。
助かった。あの靴屋さんがなければ僕の旅はそこで行き止まりになっていたわけで。

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ダスティン・ホフマンもユダヤ系の俳優。
「NY は人種のサラダボール」とはまさにこの事。たくさんの靴と、たくさんの持ち主の顔がコラージュのようにスチールされる。
監督が採ったこの技法と意向が、他者の人生とその存在を受容して尊ぶ「靴の格言」に帰結集約されていくのだ。

魔法、ギャング、地上げ、失踪した父親、母親の死と自立・・脚本はとっちらかっていてどのエピソードも中途半端かな?焦点がボケたのは残念。

それでも映画はニューヨーク在住のユダヤ人たちの物語である。冒頭の【格言】に立ち帰るならば、
願わくは、パレスチナ自治区の隣人の靴をも、イスラエル政府は試しに履いてみてくれるように。

きりん