劇場公開日 2015年10月1日

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「理想を侵食する現実の怖さを体感」アメリカン・ドリーマー 理想の代償 カタツムリンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0理想を侵食する現実の怖さを体感

2015年10月8日
iPhoneアプリから投稿

スペイン系の移民の男が才覚と真っ当な営業で石油ビジネスで財を成すのだが、さらなる成長を目論み、マンハッタンの対岸の石油備蓄施設の買収に動く。ここから、少しずつ歯車が狂い始める。
映画は終始緊迫感あふれる映像で、主人公の危機回避の行動を追い続ける。我々は男の一挙手一投足を、固唾を飲んで見守るだけだ。
主人公のモットーは法を犯さないこと、暴力の力を借りないこと。ところが、業界仲間の嫉妬や一攫千金を狙うチンピラが法の一線を超えてまとわりついてくる。
もっとも危険な年と言われた1981年のニューヨークは毎日のように銃撃事件が続く危険な街だ。主人公の理想は現実に侵食され見分けが付かなくなる。
結末は書かないが、理想を質に入れてアメリカンドリームを追い続ける主人公の姿が愛おしくも思える。
雪に閉ざされたニューヨークは荒涼としているが、情感を湛えてとてもいい。
アメリカ映画も深い。

カタツムリン