劇場公開日 2015年10月10日

図書館戦争 THE LAST MISSION : インタビュー

2015年10月9日更新
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岡田准一が追い求めた現代社会へ訴求する“説得力”とは?

有川浩の人気小説を、防衛省・陸自&海自の協力を得て映画化した「図書館戦争」から2年。第1弾は、主人公・堂上と笠原の恋愛要素プラス、言論統制を行う検閲と、図書館法にのっとり図書を守ろうとする図書隊との攻防を描くディストピアを描いた近未来アクションとして大ヒットした。その続編となる「図書館戦争 THE LAST MISSION」が、今のタイミングで公開されることは、まさに運命か? たった2年だが、あれから世の中は大きく変わりつつあり、世相への不安を込めた作品にも受け取れる、大人のエンターテイメントとして仕上がった。(取材・文/よしひろまさみち)

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主演の岡田准一いわく、「特に今の時代は説得力が必要だと思うんです」と語る。

「前作の公開時よりも『図書館戦争』の世界観が身近になり、シビアな時代にもなっていると思いますし、世界的にも主人公像が変わってきたんだと思います。実際、欧米の映画やドラマは、シビアな設定が多いですし、主人公像もリアルですよね。でも、日本はちょっと置いていかれている部分があって、主人公像はあまり説得力がないものが多いように見受けられます。でも、日本のお客さんも目が肥えていらっしゃるから、嘘っぽく見えてしまうものはなかなか見てもらえない。僕はこれが今後の最大のテーマだと思っているんです。その点、この作品はパラレル・ワールドの話ではありますが、アクション、ラブ、コメディの要素を全て詰め込んでいるエンタテインメントとしては素晴らしい作品だと思っています」

たしかに、時代の流れとともに、観客が日本映画で受け入れられるものは変わってきている。ハリウッドや韓国映画では当たり前にできている派手なアクションも、ちょっと前までは日本では不可能と言われていた。がしかし、それも急ピッチに変わり、見る側の準備は整ったように感じられる。では、この作品においてのオリジナリティはどこで出すのだろう。

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「前作のときは、堂上と笠原のラブストーリーにスポットが当たるように作られていました。では、今作ではどうやって堂上、笠原という魅力的なキャラクターを見せていくのか。そのバランスを考えながら、作り上げていきました。たしかに堂上は主人公なんですが、主軸は笠原が堂上に対して憧れているという話。前作では、堂上は笠原にとっての“王子様”だったから、そういう演技を意識しましたし、アクションもワンカットごとに技がキレイに映るように意識してしました。でも今作は違います。前作で充分二人の関係は描いていて、ふたりの関係性にも変化が生まれているので“王子様”という冠をどけることができた。上官と部下としての関係性であったり、恋愛であったり。人間関係の部分を意識して演じ、リアリティを感じてもらえるよう努めました」

今作でリアルなのは、堂上と笠原のストーリーだけではない。アクションにしろ、舞台設定にしろ、なにもかもがファンタジーでは片付けられない説得力がある。その点は「続編に向けて動き始めたときに、佐藤監督とはいろいろと話し合いました」とか。

「映画として上質なものを目指すことが、佐藤監督と僕の暗黙の了解でした。前作も好きなんですが、今作に向けては説得力を持たせたり、ラブ、アクション、社会派という要素を入れて、大人も見て喜んでもらえるエンターテイメントを目指していこうという目標をたてたんです」

そして、岡田といえば「SP」で見せた超絶アクションが印象深いだけに、今作でも身体作りやアクションシーンへのこだわりは強かった。「見た目に関して、もうちょっとシャープになろうかどうかということで悩みました」と語る。

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「撮影は大河ドラマの後だったので、恰幅が良く見えるようにしていたんです。それで前作のようにシャープにするかどうかで悩んだんですね。前作は格好よさを意識して見た目もアクションも作っていたんですけど、今作ではもうちょっと貫禄があってもいいなと思い、身体面では絞るのをやめました。動くという面に関しては、武術や格闘技のインストラクター資格も持っていますし、毎日トレーニングはするので、問題なく動くんです。だけど、武術、格闘技が得意になればなるほど、アクションの撮影は苦手になっていくものだということに気づきました。昔は武術家がアクション監修に入っていたんですが、今はアクションの振り付けをメインにアクションシーンを作っているんです。だから、本物の武術と見せるためのアクション、というバランスが大事だなと思っているんです。だから、武術を本気でやっている僕としては、アクションチームとかなりディスカッションを重ねました。アクション監督も前作から引き続き同じ方なので、いいディスカッションができたと思います」

そのディスカッションの繰り返しは、彼にとっては「ちょうど本物を知る者としては、アクションの演技を考えさせられる分岐点にきている」と分析する。「僕は多分、次の段階の悩みにきているんだと思います。まず“振り付けをして、みんなでアクション盛り上げようよ”って言っていた以前の段階とはちょっと違う悩みです。日本のアクションとは? という根源的な悩みですね。たとえば、今回のアクションでもスピードはあるんですが、そのシーンでどういう風に会話するのか、とか。なので、アクションチームとは常に話し合っていましたね」

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その熱意は共演者たちも変えていった。前作では榮倉奈々や田中圭ら、タスクフォースチーム役の役者陣は撮影のためのトレーニングを受けていた。だが今作では、その後コンスタントにトレーニングを重ねていた彼らが、撮影開始にあわせて仕上げてきたのだという。

「前作で榮倉さんは危ないアクションはアクションスタッフにお願いしていたんです。ケガをしたら困りますからね。あの頃は銃を持つだけでも重いって言っていましたから。でも今作では、リペリング降下のシーンなどをご自身で演じられていましたね。タスクフォースチームは皆、2年かけてトレーニングしてきたんです。だから、みんな前作の衣装のサイズが合わなかったんです(笑)。みんな、マッチョになっていたから。撮影前に特殊部隊用の特訓をみんなで受けたんですが、全員訓練を見事にこなしていたんですよ。榮倉さんや福士くんにも驚きましたが、田中くんなんて一番やらなさそうなのに、しっかり仕上げてきたのでビックリしました。そのおかげで、アクションシーンに関しては、すごくいい撮影ができたと思います。本人がアクションをやると、顔を撮れますし、ワンカット長回しもできて、撮れる画が変わってくるんですよね」

原作ファンのみならず、今作ではこれまで見たことがない大人のファンをも生みそうな予感。前作だけでなく、本作前のストーリーであるドラマスペシャル「図書館戦争 BOOK OF MEMORIES」もチェックの上、劇場に行ってもらいたい。

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