劇場公開日 2015年7月25日

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「日本兵たちは、如何にして餓死したのか?」野火 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本兵たちは、如何にして餓死したのか?

2022年7月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2014年。塚本晋也監督・主演。
原作は大岡昇平の「野火」で市川崑に次いで二度目の映画化。

太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島が舞台。
田村一等兵は肺病を病み野戦病院へ赴くも軽病とみなされ病院をだされる。
米軍機砲撃により部隊はバラバラになり、田村は熱帯ジャングルを彷徨うこと
になる。

この映画は日本兵が《人肉を食べた?!》実話として、
そこが鮮烈なのですが、この映画では猿の肉の干物と称する肉を
確かに食べさせられる。
その猿肉が、なんと猿はフィリピン人を指しているので驚愕しました。

原作によると、銃撃された日本兵の臀部が見事に削がれていたと言う・・・田村は
味方の兵隊が死体の臀部の肉を食べている・・・そう認識したそうだ。
《餓死した兵隊140万人》
太平洋戦争で戦死した日本兵は230万人(レイテ島は7万9000人と言う)
しかしそのうちの60%の140万人は実は餓死したと言うのだ。

大本営の脳裏に日本兵を太平洋諸島に送り届けて戦わせる・・・彼らの3食の
材料の物資補給は頭に有ったのか?
戦争とは兵士と兵士、戦艦と戦艦が戦うだけのものでは無い。
海上の物資(兵器、燃料そして兵隊の食料)の補給確保がいかに重要だったことか?
太平洋シーレーン(海上輸送ルート)は、早々と銃撃を受けて、崩壊する。
(それにしても計画は片道切符・・・勝算はどこにも無いのだった)

軍部を責めることも怒ることもなく、田村一等兵が、自分の目で見て体験した事
だけを描いている。
味方の兵隊同士が敵ですらある。
小さな島・レイテ島で亡くなった兵士は7万9000人。
生還した兵士は僅か数千人だと言う。

戦後75年。
戦争の愚かさが身に染みた。

琥珀糖
レントさんのコメント
2024年1月25日

コメントありがとうございます。私もおそらく同じ題材を扱った「生きてこそ」を昔見ました。でも誤解を恐れずに言うと生きるために人肉を食べること自体は全然ありだと思います。私もすると思います。あくまで死んだ人の肉ですが。歴史的には天明の大飢饉とかでも有名ですよね。この野火で描かれてるのは人肉食のショッキングさではなく、そこまで人間を追い詰めた戦争の罪深さが描かれてるから我々の心に訴えてくるものがあるんだと思いました。同じテーマの「ゆきゆきて神軍」とかおすすめです。

レント