さよなら歌舞伎町 : 映画評論・批評

さよなら歌舞伎町

劇場公開日 2015年1月24日
2015年1月20日更新 2015年1月24日よりテアトル新宿ほかにてロードショー

歌舞伎町のラブホテルでの1日を舞台に人々の哀歓を謳う群像劇

新宿歌舞伎町のラブホテルを舞台に5組のカップルの1日を描く群像劇である。冒頭で、ミュージシャン志望の前田敦子が同棲相手の染谷将太に大胆にも「ねえ、しよう」とせがむ。思わず微苦笑してしまうが、ハードな絡みのシーンはなく、すぐさま二人乗りの自転車で駅に向かう。まるで初々しい青春映画のようなプロローグだ。脚本の荒井晴彦は、かつてロバート・アルトマンの群像劇の傑作「ナッシュビル」を下敷きに「リボルバー」(藤田敏八監督)を手がけたが、今回は同じアルトマンの風俗画のタペストリー「ショート・カッツ」のラブホテル版を意識したかのようだ。

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染谷扮するラブホテルの店長を狂言回しに、時効が直前に迫っている逃亡犯の中年カップル、風俗スカウトマンと家出少女、韓国人の風俗嬢とその恋人、不倫の刑事カップルの断片的なエピソードが交錯し、微妙に絡み合う。染谷が東北の被災地出身で撮影中にAⅤ女優のバイトをしている妹と遭遇するくだりほか、偶然にしてもいささか出来過ぎかと思える挿話が臆面もなく連鎖する。だが、監督の廣木隆一も、あえてメロドラマ的な定石の語り口を踏むことで、かつてない変貌を遂げつつある歌舞伎町の〈現在〉をアクチュアルな映像に焼き付けようと試みたのだろう。新大久保のヘイトスピーチ集団を活写したシーンにそれは顕著で、とりわけデリヘル嬢イ・ウンウのやるせない浮遊感が強く印象に残る。彼女のエピソードには往年の日活ロマンポルノを彷彿させる濃厚で激しい性愛のドラマの手触りが感じられる。

どこか猥雑(わいざつ)さが消去された〈グランド・ホテル形式〉の群像劇は、あたかもオー・ヘンリーの掌編のように都市生活者の哀歓を謳いあげるエンディングを迎える。荒井+廣木コンビは、辛辣でアイロニカルな視点を封印し、よるべない、傷ついた者たちを、ささやかに肯定し、祝福することで、円熟した職人の手腕をたっぷりと披瀝(ひれき)している。

高崎俊夫

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