「リアリティにもう少しこだわってほしかった」アイアムアヒーロー SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
リアリティにもう少しこだわってほしかった
原作は日常的感覚、自然な人間の心理の動きなど、極めてリアリティにこだわった作品だと思う。
単なるゾンビの話だったら百番煎じでまるっきり面白くないが、日常感覚のリアリティにこだわっているところが、アイアムアヒーローという作品のユニークなところであり、かつ面白さのキモ。
映画化には向いているが、原作の面白さを再現するのは難しい。
この映画は80%くらいはそこをちゃんと抑えられていて、「進撃の巨人」ショックの傷心に、漫画原作邦画のみんながみんなクソではない、と認識を改めさせてもらえた。
序盤は本当によくできていて、日常が非日常に反転する流れが素晴らしいの一言。
原作からいろいろ改変されたところもあるが、基本的にすべて脚本を磨く上での納得できる改変だった。
ただ、序盤が素晴らしかっただけに、中盤、終盤の脚本の荒さが気になる。
たとえば、ヒロミがZQN化する前の会話などは、完全にステレオタイプなラノベに出てくる可愛いヒロインの振る舞いで、「現実にこんなカワイイJKおるか」とシラけてしまう。せめてもう少しブスだったらリアリティがあったものを。
終盤に行くほど、ストーリーのためのストーリー、都合の良い展開ばかりになって、どんどん緊張感がなくなっていく。
噛まれてからZQNになるまでの時間の設定があからさまにストーリーの都合で決まってることとか、ZQNを殺すためには完全に頭を破壊しなければならないはずなのに、ヒロミには矢を打ち込んだだけとか。高飛びZQNをラスボス感出すために、破格に強靭にしたり…。
人の反応も一貫してない。オーバーオールのリーダーは、死んだはずのヒロミが生きてるのに驚かないし、速攻で危険と判断して殺そうともしない。
ヤブがヒロミを助けようと思った動機で、原作では、ヒロミがこのウィルスのワクチンを作れる可能性がある、という極めて納得できるものがあった。なぜ映画ではこれを無くしたのか???
最後の戦闘では、映画だけ見ると、主人公サイドは極めて不自然な戦いをしている。単なる玉砕で戦ってるようにしか見えない。
主人公が残りの弾数を確認
↓
100発弱しかない
↓
もしZQNがこの数以下で、なおかつ全て当てられたら、助かる
↓
主人公は打つことに専念、他のやつは死ぬ気で主人公をバックアップしろ!
こういう了解があって戦ってるなら、緊迫感があって素晴らしい戦闘になったと思うが、こういう情報がまるでないので、なんだか分からないが戦って、死んでいってるようにしか見えない。
主人公の銃以外にZQNを倒す方法は無いのが明白なのに、なんでか立ち向かってるのがわけがわからん。
でもまあ全般に面白かったのは間違いない。
特殊メイクも、カーアクションも、ハリウッド映画に全然負けてない。
ZQNの集団シーンは、主人公サイドとの距離感とか、いかにも映画のための位置ですよ感がありすぎてチープだったんで、そこだけ気を使ってほしかった。