劇場公開日 2014年11月15日

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「見事」紙の月 スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5見事

2016年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

幸せ

話的にはまあそれほど新鮮味はない話でしたが、見せ方が本当に上手かった!
極々普通の地味な主婦が横領に手を染め堕ちていく話なのに、終わってみると哀れとか惨めとか、彼女に対してそう言った感情は抱かないんですよね。
ラストのあの解放感は、モラルやルールに縛られた世の中を生きていると、妙に共感できる言うか、うらやましくさえ思えてしまいました。
破滅と自由はホント近い位置に存在するんだな・・・と、改めてそんなことをふと思わされた映画でしたよ。

しかしメインとなる女性3人の描き方が、あまりにも絶妙すぎて思わず唸らされました。
特に上司をも翻弄するモラルの象徴のような堅物ベテラン銀行員を演じた小林聡美の存在感が半端じゃなく凄かった!
主人公・梨花との終盤の対峙シーンは、この映画で一番印象深かったです。
一方、真逆と言える存在の若手銀行員を演じた大島優子の要領良く生きてる小悪魔的キャラもなかなか印象深かったですね。
彼女の何てことのないような悪魔の囁きが、また何とも・・・。

更には梨花の不倫相手を演じた池松壮亮の母性本能を刺激するような、何かを与えたくなるあの雰囲気もまた絶妙で、若者を相手に不倫に堕ちるにふさわしい、妙なリアル感があったと思いました。
これらのパーツがあって、話が成り立ち、そして梨花が形成されていくんですよね。
地味なヒロインが、妖艶に花開き、全てから解放されていく様子は、見ていて思わずウットリとさせられるような、そんな雰囲気さえ漂わせていました。
しかし宮沢りえの演技は圧巻だったなぁ、彼女の演技なくしてこの映画は成立しませんでしたね、とにかく凄かった。

少女時代のエピソードも、かなり効果的でしたね。
手段は選ばない、そして与えることによって喜びを得る女・・・人は年を重ねようとも、本質は変わらないと言うことでしょうか。
そんなある種モンスター的な部分が、恐ろしくもありました。
彼女は死ぬまでそうやって生きていくのかな・・・。
それにしても、さすがは吉田大八監督、ありきたりな題材を、こうも見応えのある作品に仕上げてしまうとは、お見事でしたね。

スペランカー