劇場公開日 2014年8月2日

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「【ポーランド人が絶対に忘れない第二次世界大戦のドイツの蛮行の傷跡を、静謐なトーンで描いた作品。新旧のポーランド女性の姿の対比が印象的な作品でもある。】」イーダ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【ポーランド人が絶対に忘れない第二次世界大戦のドイツの蛮行の傷跡を、静謐なトーンで描いた作品。新旧のポーランド女性の姿の対比が印象的な作品でもある。】

2021年4月24日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

知的

難しい

ー 今作は「夜明けの祈り」を容易に想起させる作品である。
 舞台は、1962年のポーランドであるが、今作品は、忌まわしき行為の傷跡を間接的に描き出している・・。ー

<Caution! 以下、内容に触れています。>

・孤児として修道院で生活している18歳のアンナは、ある日、”修道誓願”を行う前に、唯一の肉親である叔母ヴァンダに会うように言われる。それまで、一度も修道院に来なかったヴァンダ。

・訪れたヴァンダは、娼婦としての生活を送っていた。彼女は、”貴女は聖女、私は”マグダラのマリア”だから、お互いのために会わない方が良かった・・”と、告げる。

・ヴァンダは、アンナは実はユダヤ人で、実の名はイーダである事。そして、イーダの両親、ルージャとハイムは戦時中に殺され、どこかに埋められたことを告げる。

・ヴァンダとイーダは、且つてイーダの両親を匿いながらも、最後は殺害したと思われる男シモンの家を訪れるが、彼は病に臥せっており、入院していた。

・シモンの息子フェリクスが懇願し、ルージャとハイムが埋められた森に案内し、自ら穴を掘り穴の中で深く頭を垂れたまま言った言葉。
 ”自分が殺したんだ・・”
そこには、ヴァンダの幼き息子も埋められていた・・。
 そして、こう呟く・・。
 ”イーダは幼かったから、神父に預けた・・。ヴァンダの子は、肌の色が褐色だったし、割礼もされていたから・・”

・二人は元の生活に戻るが、ヴァンダは自宅の窓から音楽を掛けながら身を投げる・・。
ー 元、検察官であり、”赤いヴァンダ”と呼ばれた自分の現在の境遇及び息子の最後を知った彼女には生きるという選択肢はなかったのであろう・・。ー

・イーダは、ドレスを身に着け、煙草を吸い、酒を飲み、ヴァンダとの両親の埋められた土地を探す旅の途中で知り合った青年リスと再会し、結ばれるが・・。

<「COLD WAR あの歌、2つの心」で知ったパヴェウ・パヴコフスキ監督は、彼の作品の前に、こんなにも残酷で、静謐な映画を製作していたのである。
 そして、ポーランド人は、第二次世界大戦中のナチスが犯した蛮行を決して忘れてはいない事を再確認した作品でもある。>

NOBU