劇場公開日 2014年4月19日

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「函館哀唄」そこのみにて光輝く 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0函館哀唄

2024年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

芥川賞候補に6度なり、6度落選した作家、
佐藤泰志の唯一の長編の映画化です。
若き女性監督の呉美保が繊細に大胆に演出している。

鉱山に勤めていた時、事故で同僚を死なせたことの自責から、
自暴自棄になり函館でパチンコに明け暮れている達夫(綾野剛)。
パチンコ店で知り合いになったお調子者の拓児(菅田将暉)に
家に誘われる。
粗末なバラックで姉の千夏(池脇千鶴)が昼飯を振舞ってくれる。
千夏の父親は脳梗塞で寝たきり、その介護をする母親と前科者の
拓児。生活は千夏の肩にかかり、昼は塩辛工場、夜は風俗で働き
家計を支えている。
しかし千夏と拓児と達夫は通じるものがあり、次第に親しくなる。
しかし千夏には妻子持ちの中島(高橋和也)という愛人がいて、
中島は拓児の仮出所の身元引き受け人になっている。

千夏に惹かれて不幸な境遇から救いたいと思う達夫。

しかし中島の千夏への執着が新たな不幸を引き寄せる。

底辺を這うように生きる千夏。
生き甲斐を失っている達夫。
前科者から更生できるか瀬戸際の拓児。
不器用な生き方しか出来ない彼らが函館の古びた市街地で
近くにある寂れた海辺で身体を寄せ合う。
閉塞した世界から抜け出せない喘ぎと焦燥の中で、
やっと幸せを掴みそうになる。
しかし現実はまたしても試練を彼らに与える。

どん詰まりの世界でも彼らを救うように照らす一条の光。
その光にまだ希望が残されることを感じさせる映画でした。

琥珀糖
talismanさんのコメント
2024年4月23日

大好き

talisman
sow_miyaさんのコメント
2024年1月31日

> 底辺を這うように生きる千夏。

どうしようもなく流されていく千夏を演じる、池脇千鶴の凄みを感じた映画だった記憶があります。綾野剛との海のシーンが救いでした。

sow_miya