蜩ノ記 インタビュー: 小泉堯史監督&役所広司が説く、時代劇への切実なる思い

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蜩ノ記

劇場公開日 2014年10月4日
2014年10月4日更新
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小泉堯史監督&役所広司が説く、時代劇への切実なる思い

黒澤明監督の衣鉢(いはつ)を継いだ小泉堯史監督の、6年ぶりの新作は葉室麟氏の直木賞受賞作を映画化した「蜩ノ記」。切腹の日を定められながらも、毅然とした日々を送る主人公・戸田秋谷にほれ込み、その任を役所広司に託した。小泉組が念願だったという役所も、「豊かな映画作り」と評する黒澤イズムが継承された現場で多くの財産を得た。映画としての時代劇が減少している昨今、そのだいご味、美しさを存分に味わわせてくれる秀作に懸けた決意、そして時代劇を絶やしてはいけないという切実な思いを聞いた。(取材・文/鈴木元、写真/堀弥生)

小泉監督は大の時代小説好きだ。「椿三十郎」、「赤ひげ」など師匠の黒澤監督が何度も映画化した山本周五郎は読破し、葉室氏の小説もほとんど刊行してすぐに読んでいるという。その中でも「蜩ノ記」は、戸田秋谷に特別な思い入れがあった。

「ぜひ映画の中で立ち上げてみたいなと。でも、小説を読んで全部を分かりきっているわけではないんですよね。シナリオを書いて少し分かって、役者さんに演じてもらってさらに魅力を感じるところもある。(撮影が)終わってからも何回も見るわけですから、この人は本当に虚栄心のない人だなあとか、新たな魅力を発見することもあるんです。そういうよく知りたいという思いが、映画化してみようという大きなモチベーションになっている気がします」

好きな人物だからこそ、脚本の執筆に迷いはなかった。そして、ある程度全体像が見えてきたところで「秋谷にダブる」と思い至ったのが役所。本人は、オファーには「やっとお声がかかったって感じですよね」と冗談めかすが、偽らざる本音だろう。

「『雨あがる』から今までの作品をすべて見てきて、この現場で働きたいなとずっと思っていました。監督が撮りたいものが見ている側にも伝わってくるし、丁寧というか豊かな映画作りをなさっているんだろうなと。秋谷という役に出合えたことは、この年になっていてラッキーだと思いましたね。あと数年たつと、役所じゃ年をとりすぎだってことになりかねないし(笑)、縁あってのものですから本当に幸せでした」

羽根藩の郡奉行だった秋谷はいわれのない罪で幽閉され、10年後の切腹と家譜の編さんを命じられる。常に死と隣り合わせであるにも関わらず、妻や2人の子どもに惜しみない愛情を注ぎ、農民らとも分け隔てなく接する。そんな姿に、切腹まで3年となった日に監視役としてやって来た檀野庄三郎も感化されていく。

「僕もこんな男にあこがれるところはありますね。映画の中では3年後に死ななければならないけれど、どうして悠々と周りの人を包み込むような生き方ができるんだろう、格好いいなと、一歩でも秋谷に近づきたいと思いました。脚本にもそういうふうに書かれていたので、素直に直球で演じれば一番秋谷らしくなるのかなって」

家譜を編さんする役どころのため、事前に書道の練習や日本古来の武家の礼法作法を伝承する小笠原琉の稽古を積んで臨んだ。そして、岩手・遠野ふるさと村を中心としたオールロケによる撮影で、かねて思い描いていた「豊かな映画作り」を体感することになる。

「やっぱり準備ですね。準備をしっかりしていることで現場がスムーズにいくんです。装飾品や小道具も含めて、ちょっと待て、これは違うぞということがない。現場がうまくいくためにスタッフがいろんな仕様をそろえ自分たちでも勉強している。準備って大切なんだと思いましたし、そういうスタッフは素晴らしいですよね。衣装を着てそこに入った時に、ああ、ここだな、ここで10年間仕事したんだなという、居心地がいいっていうんですかね。セットと違って外の空気や光、風も含めて感じることができました」

準備の徹底に関しては助監督時代から叩き込まれているため、小泉監督にとっては当たり前の行程である。それが理想とする1シーンをほぼカット割りせずに1テイクで撮る必須条件なのだろう。

「現場でもめるのが、黒澤さんの時も一番大変でしたから(苦笑)。僕らにできるのは、きちんと準備をして俳優さんにのびのびと自由にやっていただける場をつくること。それはスタッフが努力すればできるんですよ。黒澤さんの下で学んだ人たちですから、時間の許される中できちんと準備をして、俳優さんが役になりきって演じるのを逃さずに撮るという。そのためにスタッフは皆張り詰めていますから、一瞬を逃さずに切り取ってくれていると思う。スタッフに対する信頼は厚いです」

そんなプロ意識にあふれた現場であれば、演じる側は意気に感じるはず。特に庄三郎役の岡田准一は秋谷と庄三郎の師弟関係を黒澤監督と小泉監督に重ね合わせ、「小泉さんのつもりで演じていた」と語っていた。実際に対じした役所も賛辞を惜しまず、自身もかつてない体験だったと強調する。

「しっかりしていますよ。僕が岡田くんの年齢の時(33歳)はもっと浮ついていましたから(笑)。でも岡田くんは今回、本当に緊張したって言っていましたけれど、それはやっぱりこういう現場を経験したことがなかったからじゃないでしょうか。僕も、黒澤さんが作ってこられたものを小泉監督が引き継いだ現場で素晴らしい経験をさせてもらった。黒澤さんの映画作りは日本の財産ですからね。俳優だけじゃなく若いスタッフも、今までやってきたものとはちょっと違うなというものにふれられたことは、本当に将来のために役に立つと思います」

役所が映画で時代劇に初めて出演したのは、2000年の「どら平太」。これは黒澤監督をはじめ小林正樹、木下恵介、市川崑の4巨匠による「四騎の会」の脚本だったことにも何かしらの縁を感じる。それから14年を経ての小泉監督との邂逅(かいこう)。派手な殺陣などはないものの、優雅で、日本人が持つ慎ましい心の在り方を再認識させてもらえた。やはり時代劇は絶やしてはならない。その思いは2人にも共通している。

小泉「時代劇は経験の積み重ねが大事。衣装にしても結髪にしても、技術の継承は作り続けなければ落ちてしまう。ただ、生活様式自体が非常に現代化され、時代劇とは随分違うのでその苦労はあると思うけれど、歴史や伝統は継承しなければいけないと思う。まだまだ時代劇の中にも豊かなものはいっぱいあるし、日本人に受け継がれているものをきちんとつかむためには撮り続けたいと思いますね」

役所「『どら平太』の時に映画で時代劇に出られるというワクワク感があったんですよ。黒澤さんや大先輩たちが作ったものを見て学ぶことはできるけれど、俳優もスタッフも現場で直に体で覚えていくもので、時代劇は日本映画のジャンルとしては切り札だと思う。お客さんが楽しんでくれる時代劇があれば、映画会社も絶対に作り続けてくれる。そのために頑張っていかなきゃいけないですね」

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