劇場公開日 2014年10月18日

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「おとぎ話と”愛”を信じるあなたに」グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0おとぎ話と”愛”を信じるあなたに

2014年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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 モナコと聞くと、僕なんかはモータースポーツファンだったので、アイルトン・セナが走っていた頃の、モナコ・グランプリを懐かしく思い出します。
モナコ・マイスターと呼ばれたセナ。表彰台の横には恰幅のいいおじさんがいて、優勝トロフィーを渡していたっけ。
このおっちゃんこそ、モナコの一番エラい人。国家元首のレーニエ大公だったのですね。僕は後から知りました。
本作の主人公は、その奥様、グレース・ケリー王妃であります。
演じるのはニコール・キッドマン。
僕は特に彼女のファンではなかったけれど、本作での彼女は実に「上質な」演技だったと思います。
美貌と気品、そしてなにより、家族とモナコ公国を、誰よりも愛した「一人の女性」「一人の母親」を演じきっております。ニコール・キッドマンの女優人生にとって、本作はきっと記念碑的な作品になる事でしょうね。
舞台はモナコ公国の王室、ロイヤルファミリー。
当然、その舞台装置はたいへん豪華で、格調高いものです。その室内調度品や、美しい建築、モナコの風景を、スクリーンで鑑賞するだけでも見る価値ありです。
本作であらためてモナコ公国、その国の運営を学ぶ意味があると思いました。
Wikipediaで早速調べてみました。
モナコは国連加盟国中、2番目に小さい。ほんとうに「ちっぽけな国」なんですね。
国内産業については、なんと、日本の鳥取県の「県内」総生産の30% マジか!? ですよ。
それで国としてやっていけるの? と素朴な疑問がわきます。実はこの国、最大の産業は観光なんですね。
カジノがあります。そして何より、個人には課税されない「タックスヘヴン」なのです。つまりは大富豪達にとってはこんなに住み心地のいい、オイシイ国はないわけですね。
それらの大富豪が、住み着いてくれれば、暮らしてゆくのに当然、消費が見込める。それも大富豪の消費ですよ。僕ら、ワンルームの賃貸アパートに住んでいる人間とは、使うお金の桁が天文学的に違うでしょう。
まあ、そんなお金で、このモナコ公国が成り立つ訳であります。
さて、そんなモナコを快く思わない国がある。
お隣のフランス。
時の大統領はドゴール大統領。
モナコのことを苦々しく思っている。だって、フランスのお金持ちや、会社がみんなモナコへ逃げちゃうんだもん。
フランス政府の財布にお金が入らない。
アッタマに来たドゴール大統領。なんと、モナコとの国境線を封鎖し、軍隊を出動させます。
「言う事聞かないと、ぶっ放すぞ!!」とモナコに脅しをかけた訳です。
しかも、モナコにとってさらにまずい事がありました。モナコ公国は電気、ガス、水道などのライフラインを、全部フランスに頼り切っていたのです。これを止められたら、それこそ一巻の終わり。国家は消滅です。
そんな土壇場をグレース王妃、レーニエ大公は、どう対処していったのか? フランスの圧力に屈して、属国になるのか? そういえば、どっかの国は、首相が数年で交代する度に、真っ先にアメリカにご機嫌伺いに行ってますなぁ~。こういうのは実質的な属国ですね。まあ、いいです。
そういう選択を迫られる訳です。
僕がこの映画で教えられた事。
軍隊なんていらない。必要ない。
ましてや「ゲンシリョクむら」なんていう巨大産業体なんてまったくのナンセンス。
そんなものなくても「モナコ公国」というちっぽけな国は、見事に、実に見事に、絶体絶命の危機を乗り切りました。
モナコに軍隊はありません。
モナコは一発の弾も撃つ事なく、フランスを国境線から撤退させる事に成功しました。
モナコにとって、とっておき、最後の切り札。
それこそが「グレース王妃」の存在だったのです。
明日にもフランスから、爆弾の雨が降らされるかもしれない。そんな中、グレース王妃は、勇敢にも「大舞踏会」を催し、敵対するドゴール大統領さえ、ご招待してしまいます。
その舞踏会でのスピーチは絶品です。
あのチャップリンの「独裁者」でのラストシーンのスピーチ。あれに肉迫するような、ニコールキッドマンの熱演でした。
「私はおとぎ話を信じます。世界はきっと変えられる。人々の”愛”によって変えていけると信じます」
この力強いメッセージ。
おとぎ話と愛を信じるあなたに。
是非、スクリーンでご堪能頂きたい作品です。

ユキト@アマミヤ