劇場公開日 1964年4月18日

「法の目を搔い潜る金持ちたち…そしてヤクザの執拗な強請りに、憐れベテラン中年刑事の倫理は壊れゆく・・・」どろ犬 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0法の目を搔い潜る金持ちたち…そしてヤクザの執拗な強請りに、憐れベテラン中年刑事の倫理は壊れゆく・・・

2022年7月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 自分が豚箱にぶち込んだヤクザの情婦に手を出してしまったやもめ暮らしの中年刑事が、それをネタに別のヤクザに情報提供を迫られる…。普通ならそのままお縄か、もしくはとことんまでアウトローに与していく展開ですが、この作品の主人公はそのどちらの道も固辞します。そんな彼が凶行に次ぐ凶行に及んだ心理は如何なるものであったか・・・
 弱きを助け強きをくじき、常に清廉潔白で公明正大……主人公は駆け出しの頃からずっとそれを己の矜持としてデカを続けてきて、その愚直さゆえに一度は家庭を失い、次第に心が荒んでゆく中で出会った純な女性がヒロイン千代だったのでしょう。
 この時期のハードボイルド作品はハリウッドのギャングものをそのまままねたような作品も散見され、銃でのドンパチがいかにも安っぽくて今観ると辟易させられるものも多いのですが、本作は墜ちていく一人の中年刑事の心情にフォーカスした造りになっているため、古さを感じず、西村晃さんのヤクザの怪演も手伝って最後までハラハラドキドキ観られました。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)