劇場公開日 2012年10月13日

「The Golden Wet Fingers!!」赤い季節 harakiribeatさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0The Golden Wet Fingers!!

2012年12月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

チバ ユウスケ(元 Thee Michelle Gun Elephant、Rosso 現The Birthday)のソロプロジェクト「SNAKE ON THE BEACH」の曲「Teddy Boy」の歌詞にインスパイアされた能野哲彦が(元Thee Michelle Gun Elephantのマネージャー)、初監督&脚本を手がける作品。
劇中に架空のバンドで登場するThe Golden Wet Fingers(チバ ユウスケ、イマイ アキノブ 中村 達也)が観たいが為に劇場に行きました(笑)

期待通りカッケかった~。

映画としての論評はさておき…。
タイトルの「赤い季節」とはどんな季節?「赤」という色からは血液が連想されることもあり、あまり穏やかなイメージはない。どちらかと言えば攻撃的なイメージ。チバの歌詞は「赤い季節を抜けて俺達旅に出よう」で始まる。「旅に出る」とは解放的で自由であることを象徴する表現。てことは「赤い季節」はあまり良い季節ではないのだろうか…。
だいぶナンセンスな分析をしてみたところで、言葉に対する印象は人それぞれだから、そんなことはどうでもいいのだけど。

映画を観るに、能野監督が描きたかった「赤い季節」とは、「自分が選んだわけでもない抗えない現状の中で、目の前すら見えずにとにかく藻掻きながら必死に毎日を生きる。でも、自分が本当は誰なんだか分からず毎日生きている。そんな人生を続ける意味なんてないんじゃないか?」というような重たくて息苦しいジレンマ。
自分だけの力ではどうしようもない、気づいたらそこに存在している自分、育った環境や周りの人々との関わりの力学で存在させられている自分。そこには「自分」は居ても、「自分の自由な意志」は在り得ない。主人公は、自らの意志ではなく「殺し屋」をさせられていて、そこから抜けたいと藻掻く。その主人公が「昔のオレを見てるようだ」と言う高校生(爆弾ジョニーのVo.りょうめい)は両親をなくし居場所がなく死にたいと思っている。そんな二人が、現状を壊し自らの「意志」で歩き始めようとする。そう、「赤い季節」を抜けて旅にでる。

チバの歌詞はこう締めくくる。「赤い季節を抜けて 俺達旅してる どこまでも行こうぜテディボーイ なんとかなるようになるぜ 何も見えてないからさ どこまでも行けるさテディボーイ」

二人で山頂から朝日を見ながら主人公が少年に問いかける「まだ死にたいと思うか?」と。

この映画の答えの全てはあのシーンにあるのではないだろうか。

harakiribeat