劇場公開日 2013年9月28日

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「「家族」に対する解答の1つ」そして父になる nagiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「家族」に対する解答の1つ

2018年6月13日
iPhoneアプリから投稿

家族とは生物学的な血の繋がりなのか、或いは人生経験における共に過ごした時間から生ずる絆なのか... 是枝監督が『万引き家族』でも世界に問うた「家族とは何か」を主題とする作品。

と、同時に「幸福とは何か」を問題提起している。幸福とは「金銭的裕福さ」と一意的に対応するものなのだろうか?我々が身を置くのは資本主義社会であるが、子供にとってその即物的でユートピア的な思考は、子供の想像力や感性を頭打ちしてしまう檻となってしまうのではないだろうか?確かに幸福は様々な形があっても良いのだろう。しかし、大人になるにつれてますます理性の束縛を受けるこの日本の社会において、子供の溌剌さを抑制するというのは、彼らの自由を奪い、退屈さの監獄に閉じ込めることを意味する。

社会的に自立している、所謂「ちゃんとしている」ことが全てではない。ある程度の社会ズレはしていないに越した事はないが、子供には、たくさんの世界を見せる必要がある。高級マンションの一室でピアノを練習しているだけでは得ることができない、地域との密接な交流や、両親の職能をその目に焼き付け、尊ぶといった、幅広い人生経験が子供にとっては必要不可欠だと考える。

そういう意味で、家族が「人生経験や愛情を教える先生・仲間」であるとするならば、血の繋がりは、もはや家族の必要条件ではないのだろう。

という是枝監督の解答を与えた優等生的作品。

この是枝監督の「家族とは何か」についての論考は『万引き家族』でより深化、複雑化する。

nagi