ー 中村義洋監督が、濱田岳さんを主演として頻繁に起用する理由が良く分かる作品である。
そして、童顔の濱田さんが小学生高学年から30代までを何ら違和感なく演じる姿にも驚嘆する作品でもある。ー
◆感想
・濱田岳さんが演じた渡会悟が、中学に進学せず、団地を守るために、毎夜団地をパトロールする姿が印象的である。
- 序盤はコメディタッチで描かれるが、中盤その理由が明らかになるシーンは沁みる。
そして、いじめられっ子であったナヨナヨ君(永山絢斗)が、彼を慕う理由。
悟の生き方には、ブレが無いのである。思い込んだら一直線。
大山倍達(この空手の達人を、知っているのは40代以上であろう・・。)に感銘を受け、3本から始めた腕立て伏せ。この伏線が後半、見事に回収される脚本の見事さ。-
・悟は、中学に進学せず団地の商店街のケーキ屋に就職。
- 店主を演じる、ベンガルのせこさが絶妙である。-
・そんな息子を、信じて陰で応援する母(大塚寧々)。
- 普通は、”中学にも行かないなんて・・、”と反対する立場の筈だが、息子を信じる寛容な姿。 そして、後年、母の形見の日記に書かれていた事。母親は何でもお見通しであり、その日記を読んだ悟の涙。
観ている側も、グッと来るシーンである。-
・団地の住民及び、小学生の同級生が新たな世界に旅立って行くたびに、住民が徐々に減って行く見せ方も上手い。”107人-〇人=〇人”
- 悟が好きだった隣室の松島さん(波留)との淡い恋。憧れだった早紀さん(倉科カナ)。皆、年月が過ぎるにつれ、悟の元を去っていく。けれども、彼は団地を守り続ける。-
・団地の住民も、世代交代し、海外の方が増えて・・。
そして、出会ったマリア。彼女は父親(田中圭!)から、虐待を受けていて・・。
- 今や、超売れっ子の田中さん。今作は10年近く前の作品だが、容姿が変わっていないし(役者として、節制されているのであろう。)、演技も上手い。流石である。-
・悟が、マリアを虐待する父親や仲間を大山倍達直伝の技で、やっつけるシーンは爽快である。彼が、パトロールするために鍛錬してきた結果が、見事に表現されている。
<率直に書くが、実に面白き作品である。
コメディ要素から、泣ける展開に持って行くストーリーテリングの見事さ。
作品としての分かり易さ(大切だと思う。)
今作では、エレファントカシマシの”sweet memory"がテーマソングとして使用されているが、赤羽団地で育った宮本浩次を意識しての起用である事は、容易に想像出来る。
今作は、劇場で観たかったなあ・・。(嘆息)>