劇場公開日 2012年7月21日

「声優人と絵に助けられた作品」おおかみこどもの雨と雪 ふっくんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0声優人と絵に助けられた作品

2012年7月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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ふっくん
heso&momoさんのコメント
2012年7月27日

予告やメイキングだけでは推し量れない深さにやられました。
今回はサマーウォーズとは違い、たった三人の生き様に焦点を絞っているわけですから、一人一人への掘り下げた心の動きが本当に痛いほど切なく心に響きました。その掘り下げ方も、『ここのシーンはこうだから、このように感動してください。』という監督のジェットコースターのレールのような誘導や、押しつけがましい解釈の押しつけは抑えられ、適度にだけ味付けされていると思いました。
結局、映画の深さってそこなのかもしれませんね。風にそよぐ背景の花やリアルな水の表現は、いかにリアルに魅せるのかの技術だけを追求して何の感動ももたらさないピクサーのものとは一線を画し、深く何かを感じて貰うための小道具とか一手法に過ぎず、そしてどの位の深さで心が震えるのかは観る人それぞれの『心の質』によって決る。おおかみおとこがあっさり河に浮いて死んでいるのはショックでした。それを目の前で見てショックを受けて立ちつくし崩れ落ちる。普通の監督だったらもっと表情をアップに、声優に『ナゼ死んでしまったのよ~!』と絶叫させていることでしょう。それを遠景からだけで捉え、その心情を観客に推し量らせる。その間というか行間も『深さ』なのでしょう。
エンディングにも納得しました。雨は親から離れて行こうとしている。もう自分の守ってあげたい子供ではなくなってしまう。雪が学校にいるのはわかっていることなので。そして、まだ親でいたい、子供でいて欲しいという気持ちが、『私はまだあなたに何もしてあげていないのに。』と言わせ・・・・雨は振り向いたけど去って行く。『お母さん、もう大丈夫なんだよ。』と。大沢さんの声も自然で良かったですし、宮崎あおいさんの声に感動しました。普段の会話も。『目を開けて!雨!』も。録音ブースの様子をTVで見ましたが、全身で、心のそこからの演技で監督も感謝していましたね。これを慣れた声優では‘演技’ではなくセリフだけが際だっていたかもしれません。宮崎あおいさんの‘演技’があって完成されたモノになったと感じました。観客を感動させようとあの手この手で盛り上がるポイントを作るのがセオリーなら、『そんなクサイ事はしない。そんなレベルの話しじゃない。』という細田監督のメッセージを受け取った気がしています。そういった映画の方がズーッと心に残るのではないでしょうか。

heso&momo
ムーさんのコメント
2012年7月26日

いくつか思った点を。
1.雨と雪の分かれのシーンが無い。→雨と雪のケンカのシーンで雨と雪との関係は描けたといってよいのではないでしょうか?雨はオオカミ、雪は人間としてはっきり生きていくことをお互いに受け入れたわけです。その後二人がそろうシーンがほとんどないので、不十分と言われたらそうかもしれませんが。

2.自分が雨を探しに行くのなら、誰かに代わりに雪を学校へ迎えに行ってもらう手配もせずに、雨のみに集中したのかも疑問です。→これは指摘している方も多いですが、山に入っていなくなったことを知って探しに行くのならばそうするのが絶対に適当です。しかし、目の前で歩いていってしまう場合。普通すぐに追いません?見失うわけですから。
もっとも、雪がそろっていたら別のシーンになってもっと感動できたかもしれないという点については同意します。ただ、そうすると親と子の関係と兄弟の関係が同時に起こってしまい複雑化する危険性も同時に感じますね。

ムー