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離婚して、ドライブインのオーナーとなっていた翔子(裕木)に傷の手当てを受け、惹かれてゆき、そのままアルバイトをすることになった“僕”。常連たちからは“旅人”と呼ばれるようになったが、やがて店の雇われ店長であるセイジ(西島)が常連客の一人、ゲン爺(津川雅彦)の孫娘りつ子に対して特別に心を許していることを知り、彼にも興味を持ちはじめる。
内定はもらったが、自分を見つめ直す(?)ような旅に出た旅人。常連客たちとのやりとりによって社会人の第一歩を踏み出したかのよう。もしかするとエロい内容になるのかと思えば、全く違っていた。冒頭からも豚の死骸が映し出され、こりゃセイジが殺ったんじゃないかとミスリードさせる手法もある。その他にも凝った映像(バイト中の僕の先に固定カメラをつけたりしたやつ)など、映像的にも意欲的にやってると感じた。さらに、旅人との出会いの時制だけ別アングルで繰り返し。そして美しく、幻想的な森や湖の風景に癒される・・・
動物愛護協会の宮川一郎太と女と議論したり、動物の命と人間の命について語られる、ある種の厭世的な感情を見せるセイジ。実は両親を殺して少年院に入ってたという過去も語られるが、多分、妹をDVから守ろうとしてやったことなのだろう。不幸な人がいる限り、自分には幸福はやってこないとまで考えてる・・・
巷では連続殺人事件が起こっていた。バブルが終わった頃、宮崎勤の事件が起こった頃だろうか。そしてその魔の手はりつ子に襲いかかる。両親が惨殺され、りつ子も左腕を失い、心神喪失となってしまった。そして、何日が経ち、常連たちがお見舞いに訪れたとき、セイジはナタで自らの左腕を切ってしまう・・・驚愕。幼いりつ子がはますます病態が悪化するんじゃないか?などとも思ってしまうが、20年後の彼女は彼を神格化していたようだ。
暗すぎる。だけど、人の不幸、痛みを背負ってしまうという清らかな心。翔子に迫られても肉体関係を持たなかったようだし、自分を殺し、あくまでもストイックに生きる。凄いとは思うが、こうはなりたくないなぁ・・・