劇場公開日 2011年10月1日

DOG×POLICE 純白の絆 : インタビュー

2011年9月26日更新
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市原隼人、相棒シロに教えられた新たな気づき

テレビドラマから映画になった「ROOKIES」「猿ロック」などの人気シリーズを代表作に持つ俳優・市原隼人は、その役柄のイメージも手伝って“熱い男”という印象が強い。そんな市原が未挑戦だった役柄──警察官役を、新作主演映画「DOG×POLICE 純白の絆」で演じている。若く熱い警察官の早川勇作と、警備犬を目指すシェパード犬のシロが活躍するバディムービーだ。初の警察官役、犬との共演を経て、俳優・市原隼人は一回り大きな成長をみせた。(取材・文/新谷里映、写真/堀弥生)

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同作は、警“察”犬ではなく警“備”犬に焦点を当てた初の映画。「海猿」の原作者である小森陽一が、警視庁に実在する警備犬を徹底的に取材した原案をもとにしたアクション・エンタテインメントだが、市原は「この『DOG×POLICE』はどのカテゴリにも分類されない映画のような気がする」と、もっと深いものが詰まっていると語る。そのひとつが、警視庁警備部警備二課装備第四係の早川というキャラクターだ。

「警察官の制服をきた瞬間に、ちゃんと誇りを持って、責任をもってやらなければならないという気持ちがありました。実際に警察官として職務にあたっている人たちに恥じないように、気持ちを込めて、熱を込めて芝居をしたいなと思ったんです。早川は熱血漢。これまでも熱いキャラクターを演じることは多かったけれど、熱くて人間くさいキャラクター、個人的に好きなんですよね(笑)。早川は、ものすごく繊細で、人の気持ちを汲み取りやすい男でもある、相手の感情をまっすぐに受け止めるキャラクターだと捉えて演じていました。ときどきタブーを冒すこともあるけれど、彼なりに現場の状況をわかったうえでの選択。それも彼の魅力。こんなヒーローがいたらいいなって思ったんですよね(笑)」

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人一倍正義感が強く、刑事を夢見る早川。しかし新たに配属されたのは、警備犬とハンドラーとが所属する部署だった。そこで相棒に選ばれたのは警備犬のシロ。早川とシロが揺るぎない絆を育んでいく姿も、市原がほれた作品の魅力だ。

「もともと犬好きで、実家でも犬を飼っているんです。でも、警察犬と警備犬との違いは知らなくて。実際に訓練所におじゃまして訓練風景をみせてもらったとき、一歩引いてしまうくらい圧倒されて、厳しい世界なんだなと実感しました。と同時に、ものすごく愛を感じたんです。その愛を映画にも生かしたい、そう思ったんですよね」と、自身が感じたものをキャラクターに取り入れ、パートナーであるシロと心を通わせ、相思相愛と言えるほどの関係を築き上げたというわけだ。

「シロと初めて会ったのは、撮影に入る前、御殿場のドッグランでした。その日は5時間くらい一緒に走り回ったんです。服従訓練ももちろん大切だけれど、まずはシロに現場を楽しんでもらう、その延長上に『DOG×POLICE』があればいいなと思って。よく動物ものの映画は大変だと聞きますし、今回の現場でももちろん何度もテイクを重ねたシーンもあります。でも、苦痛ではなかった。むしろシロが現場を和ませてくれていましたね」と、シロとの2カ月にわたる訓練を振り返る市原。その表情はなんとも穏やかで、いかにシロに愛情を注いだのかが伝わってくる。

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「一緒の芝居じゃないシーンであっても、シロはいつも僕のことを探してくれたり、芝居で僕が声を出している間中ずっとこっちを見ていたりするんです。だから、カットがかかるとすぐに飛んでいって、シロ~! って(笑)。空いている時間はいつもおなかをなでたり、一緒にいましたね。ここまで深く動物と共演するのは今回が初めて。台本を読んだときに、大丈夫かな……って多少の心配はありましたが、どこから芝居でどこから芝居じゃないのか分からないような、シロとの自由な演技はものすごく新鮮でした」

また、七高剛監督からは走るシーンが多いため、事前に持久力をつけておくよう指示があったそうだが、「正直、あそこまで激しいとは思っていなかった(苦笑)」と、苦労もあったと明かす。特にシロも一緒に走るシーンは、相手が犬だけに1回1回が全力疾走。走っているシロの表情をカメラに収めなければならない撮影スタッフにとっても体力勝負の場となった。さらに、疾走感のあるアクション映像だけでなく、CGに頼らない、本物の火にこだわった爆破シーンもみどころのひとつ。危険と隣り合わせのシーンについては、「アクションも(体力的に)何度もできるものじゃないけれど、爆破シーンは一度きり。スタッフにもキャストにももの凄い緊張感がありました。犬もそれほど集中力は持たないと思ったので、とにかく楽しんでそこに居てもらうということを一番に考えていましたね」。市原がシロへ注いだ愛を、シロは何倍にもして返している──スクリーンの中でシロが早川に見せる信頼と愛にあふれた表情や仕草から本物の絆を感じるはずだ。

市原がスクリーンデビューを飾ったのは2001年「リリイ・シュシュのすべて」。それから10年、同作を含めて17本の映画に出演しているが、その多くが主演であることは驚がくに値する。最近は「主演は受け身だと思っているんです」と、主演俳優として現場で常にアンテナを張るようになったと自らの変化を言葉にする。ちなみに今回の現場では、相棒のシロが新たな気づきを与えてくれたと言う。

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「シロを見ていて、芝居ってリアルじゃないんだと思ったんですよね。今まではリアル(な演技)にしようとしていたけれど、どんなにリアルにしたくても所詮は虚像。シロを見ていたら人間の芝居は虚像のもの、もっと力を抜いて、自然体でいなくちゃと思ったんです。大きな気づきでした。役者って本当に難しくて……矛盾だらけだし、正解もないし(苦笑)。それでも、たとえ自分を見失うことがあったとしても、芝居をしているときは楽しいんですよね。そして、現場にはキャスト&スタッフそれぞれの“こうしたい!”という気が集まっている。こんなに凄いパワースポットってないと思うんです」

自らの仕事場をパワースポットだと胸を張って言えるのは、やはり市原が“愛”のある俳優だからだろう。そんな市原は今後、どんな俳優を目指すのか、どんな男を目指すのか。

「守りには入りたくない、負けず嫌いは忘れたくない、嫉妬心はいらない……っていうのが、今の自分が思う格好いい男性像ですね。敬意を払いながらも相手にぶつかっていけて、相手と同じ目線に立てる男、そういう男でありたい。役者としてもやってみたいって思っている役があるんです。多重人格の役。1つのキャラクターだけでなく、いろいろな姿をいっぺんに見せられたら、僕も観客も楽しいと思うし。なによりも、自分自身が感じたことのない心情に近づいてみたいという興味がある。それを演じることはきっとやりがいがあると思うんです」

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