劇場公開日 2011年5月28日

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「妻夫木聡と松山ケンイチの魅力が最高に光る作品です!!」マイ・バック・ページ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0妻夫木聡と松山ケンイチの魅力が最高に光る作品です!!

2011年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

時代は、沖縄返還があり、ビートルズの音楽が日本中の10代20代の心を捉え、TVでは、GSの音楽が溢れ出す。若者文化が、時代の先端に踊り出していた時代なのかもしれない。
それまでの日本は、目上の者を敬い、人生の先輩が築き上げてきた文化や、その価値観を真っ向から否定し、若い世代のエネルギーを社会にぶつけ、正々堂々と時代の先端に躍り出ようと試みた時代は、この時まで無かったのかもしれない。いつの時代も、若さとは、身体的な成長に伴う、そのエネルギーのはけ口を探し、もがき苦しみ、精神的にも、外へ外へとその自己の世界感を拡大しようと試みる時間だ。総ての生物に共通した成長期にある生命の働きなのだろうが、こと人間は言語を持ち、広く社会に深い係りを築いて行く過程で、その人の人格形成が飛躍的に成長を遂げる時期であるからこそ、この時点で、誰と出会い、何を考え、どんな行動をするかが、後のその人の一生左右する事にもなる非常に
人間が生きる上で大切な時期である。この映画は、不幸にも若さ故に、人間の本質を見抜く力に欠ける主人公、沢田が梅山と出会う中で、彼の後の人生を危機的状況に追い詰める事態へと、自らはまり込んでしまう青春悲劇だ。原作は川本氏の実体験に基づくノンフィクションなので、説得力がある。その沢田を妻夫木聡と、梅田を松山ケンイチが、共演する事だけでも、若さ+大学生世代を卒業している彼らが、冷静にそして確かな演技力で、二人の若者の青春時代の心の成長と陰影を演じ競い合う本作は、必見の価値があると思う。
この映画は、当時の生活感をよく捉えていただろうな?と想像するのだ。私自身その時代をよく知らないので、確信が持てない。しかしこの山下敦弘監督も未だ若手監督で、この時代を生きていないのだが、それが返って、この作品に瑞々しさを添える事となった要因であると思う。これは実社会で、現実の壁の前に悩み葛藤し、また自己を持て余す青春の熱に苦しむ二人の人間の出会いを通じて、人の出会いの大切な事、そして理想に向けて生きる事の尊さ、自己の力では、図り知る事の出来ない人の運命の、不思議な力があると言う事。それでも人が人として生きることを日々続けることの素晴らしさと、困難に立ち向かう勇気を描いた、この作品は邦画界史にまた、新たな1ページ加えた作品と評価出来ると私は信じるのである。

ryuu topiann