劇場公開日 2010年6月26日

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「力作止まりの、されど力作」宇宙ショーへようこそ かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0力作止まりの、されど力作

2010年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

拙ブログより抜粋で。
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 まずは目を惹く煌びやかで美しい美術。
 おもちゃ箱をひっくり返したかのような個性豊かな宇宙人たちのキャラクターデザイン。
 作品世界を盛り上げる壮大で楽しい音楽。
 内容的にもジュブナイル映画として申し分のないストレートな冒険活劇。

 製作者の並々ならぬ意気込みは伝わってくるし、やりたいこともよくわかる。
 なおかつ多くの面でそれらは結実しているとも思う。基本的には賞賛したいほど、よくできたファミリー向け娯楽映画だと思うのよ。
 でも、やりたいことを欲張りすぎで、いろいろと消化不良を起こした。

(中略)

 観客を愉しませる様々なアイデアが盛り込まれ、いたるところでSFとしての快感=センス・オブ・ワンダーも感じるのだが、どうも細かいギミックにしか目がいっておらず、宇宙サイズでのSFロマンは描けていない。
 異星の異文化を覗き見る愉しさはあるんだけれど、この修学旅行は地球から遥か離れたところへの旅行なんでしょ。その星から星へと移動する移動感が今ひとつ伝わってこない。
 光速より早く移動する“超速”の科学的なまっとう性は適当なファンタジーでかまわないと思うけど、その“移動時間”はちゃんと描いかないと。パッとカットが切り替わって、地図上で「はい、ここに来ました」って言うだけじゃ、その距離感は伝わらない。

 この移動もそうだけど、どうも時間配分が映画的じゃなく、30分の連続テレビアニメ5話ぐらいを一気に観させられたような“いびつさ”を感じるのよ。
 一週ごとのテレビアニメなら超速で出発したところで「続きは来週」となって、次週到着したところで始まれば、その一週間のリアルな時間が移動時間を補うけれど、この映画での描写は、どこでもドアで瞬間移動したかのようで、超速の凄さを表すどころか、宇宙スケールのはずの世界観を結果的に狭くしてしまっていると感じた。
 出発前の村川村や前半の月での、映画としては“雑多なこと”の時間が、全体のバランスから逆算して長すぎでダルい。
 逆に悪役がらみの情報を後半に詰め込みすぎで、わけもわからないうちの急展開がやたら駆け足に感じる。

 クライマックスをこういう展開にするつもりなら、前半でのアルバイトとか完全な寄り道じゃない。
 いや、何度も言うけど、そこで観客に見せたい「子どもたちの体験学習」て趣旨はわかるんだよ。だけどそこは心を鬼にして切り詰めるべきでしょ。
 その一方で後半へ向けた伏線はおざなり。というか、伏線の張り方が下手。

 大勢の宇宙人が誘拐されてるってことを、たった一言の説明ゼリフだけですませるから、突然突きつけられた強制労働はあっけに取られるだけ。
 クライマックスに語られる夏紀の周に対する思いも、それ自体は感動的なんだけど、それまでにそれを気に掛けている描写がろくにないから、これまた説明ゼリフに頼った最低の脚本に映る。

(中略)

 思わず否定的なことばかり並べているけれど、最初に書いたようにアニメーションの自由さ、楽しさを存分に発揮した素晴らしいアニメ作品だとは思うの。
 ただ作り手の思いを制御しきれずに暴走した感が否めない。これでは映画としては力作止まり。

 でもまあ、観ようかどうしようが悩んでいる人がいたら、観ておけって言う。
 この作品から滲み出た「こういう映画を世に送り出したい」っていう思いに、最近じゃなかなかお目にかかれないほどの圧倒的な力を感じたのも本音だから。

かみぃ