劇場公開日 2009年6月13日

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「小物使いと心理描写が上手い」レスラー do_nothingさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5小物使いと心理描写が上手い

2017年11月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ストーリーとしてはありきたりというか、驚くようシーンは出てきません。

ただ、皆さんが言ってる通りミッキー・ロークの演技は見応え十分で痛々し過ぎる位ですし、デビュー作が『π』ということで勝手にイロモノのイメージがあったダーレン・アロノフスキーがこれだけ丁寧に登場人物の心理描写をしていて驚きました。
とても感情移入できる作品に仕上がってます。

あとは、主人公とストリッパーのキャシディとの間で、80年代が最高でNirvanaが出てきて暗くなった90年代は最悪だったという主旨の会話がなされるのですが、過去にすがって生きる主人公と現代を生きる娘との間のジェネレーションギャップを各人の家に貼ってあるポスターで象徴的に表現していたのが印象的でした。
主人公の家にはAC/DCのポスターが、娘の家にはVampire Weekend (本作品が撮影された頃だと割とデビューしたて) のポスターが、それぞれ貼られてました。

(関係ありませんが、昔観た映画で最後気になる女の子をデートで誘う時にVampire Weekendのライヴに誘うってのがあって、日本での感覚以上にアメリカではブルックリン勃興の象徴的バンドなんだろうなと思いました。)

あとは、貧困の象徴であるトレーラーハウス、レスラーの代償の補聴器、仲間のレスラーが履くボロボロのブーツ等、観客の気持ちを暗くするための小道具がたくさん出てきて、ハンドカメラで撮られたと思しき割とブレる映像を混ぜながら割とリアルに描写されておりました。

スーパーな映画ではないと思いますが、見る価値は十二分にあると思います。

donothing