セントアンナの奇跡 : 新作映画評論

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映画

セントアンナの奇跡

劇場公開日 2009年7月25日
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セントアンナの奇跡 7月25日よりTOHOシネマズシャンテ、テアトルタイムズスクエアほかにてロードショー

命を大切にする人間は敵・味方に関係なくどこにでもいる

この映画を見てサミュエル・フラーの傑作「最前線物語」を思い出した。「最前線物語」の歩兵たちは、「戦場での真の栄誉は生き延びること」が持論の軍曹に導かれ、死の淵を通りながらきわどいところで生き延びていく。この「セントアンナの奇跡」でも、兵士の命を左右するのは指揮官の意識だ。戦争に熱中し、勝利に執着してどんな犠牲もいとわないか。あるいは、戦争を否定的に見るか。指揮官次第で兵士の運命も変わる。国と国の戦いとは言っても、つきつめれば個人対個人の関係になってしまうという指摘が興味深い。その意味でも、この映画の黒人部隊を指揮する将校の無能ぶりには、人種差別に対する痛烈な批判が込められている。この将校が黒人兵を差別しているのはもちろんだが、こんなバカな将校をあてがうこと自体が、黒人の命を軽視するアメリカ軍の差別体質を顕わにしているからだ。

ナチスによる一般市民の虐殺、無差別襲撃など戦争の残酷さを前面に出しているが、それ以上に印象的なのが、命を大切にする人間は敵・味方に関係なくどこにでもいるという描写だ。この物語の奇跡もそんな人間との遭遇から生まれるのだが、運命の分かれ道のシンボルに女神像の首を使ったことで、歴史的な事実にワン・クッションが加わり、神話とも寓話ともとれるニュアンスが生まれ、味わいが深くなった。

森山京子

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