劇場公開日 2009年3月14日

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「フラッシュバック?の多いので筋について行くのに疲れました。でも映像的には、エモーショナルで良かったです。」ダイアナの選択 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5フラッシュバック?の多いので筋について行くのに疲れました。でも映像的には、エモーショナルで良かったです。

2009年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 最近『パッセンジャーズ』という映画が公開されました。その作品のラストと凄く似た観客の騙し方を見せる作品です。つまりアクロバット的などんでん返しがあって、見終わった人の中には、深く考え込んだり、腹立たしく思ったり、受け止める方によって様々なダイアナの選択の『答え』があり得るでしょう。
 単館系の作品を、何本も見ていて目が肥えている方なら、この作品くらいインパクトがあった方が面白いと感じられるでしょう。
 あえて解説しませんが、「フラッシュフォワード」という未来に向かって時系列がジャンプする手法とは、どんな意味を持つのか。本編のラストをご覧になれば、ははん、そういうことだったのねと納得されると思います。

 物語は、17歳のダイアナが親友のモーリーンと遭遇した高校乱射事件。犯人のクラスメートに銃を突きつけられ "友だちと自分のどちらか一人を撃つ, どっちがいい?" と聞かれとき、ダイアナは思わずモーリーンの手を離して、『殺さないで』とつぶやいてしまったのです。

 そのことを15年後の一児の母となった今でも後悔し続けるダイアナの心情に即して、ストーリーは、何度もフラッシュバックしていきます。母親は娼婦。しかも母子家庭で育ち、鬱屈した日々を過ごしたこと。そんなモヤモヤした気持ちを晴らしたいばかりに、学校でも反抗的な態度をとって、ヤクにまで手を出してしまったこと。
 また、かけがえのない親友モーリーンとの出会い。共通の男を巡って喧嘩したこともあるけれど、すぐ仲直りして、よく遊んだ楽しい思い出。
 そして何度も繰り替え返される事件直前のこと。

 そのトラウマは、どうも自分の娘エマにも良くない影響を与えているのではと気にするダイアナでした。
 哲学の教授として脚光を浴びているポートの結婚生活も順調で、幸せな生活を送っているはずのダイアナでしたが、やはり15年前の忌まわしい事件を思い出す度、苦しむのでした。そのせいか彼女は幻覚を見るようになりました。
 街でポールを見かけたとき、自分によく似た女性とデートしているのを目撃したダイアナは、ポールに詰め寄ろうとします。しかし、次の瞬間では、その女性は消えて、ポールだけが驚いた表情で、ダイアナに叫んでいます。いきなり飛び出したダイアナは、夫の静止の言葉も届かず、車に敷かれてしまいます。
 これもまた無傷で退院したことから、事故自体が幻影なのかもしれません。

 そして、エマが行方不明になって、森を探しているときも、見つけたはずのエマが突如消えてしまうのです。なんだか話が、『パッセンジャーズ』に似ていますね。

 さて15年前に親友を裏切ったという罪の意識から、どうやってダイアナは解放されたのか。意外なラストが待ち受けていたのです。

 要所にスローモーションやセリフのないショットを取り入れて、ダイアナの心理状態を映像だけで表現していたのが印象的でした。とっても詩的でエモーショナルな映像が得意な監督なのですね。チョット現実感が希薄なのが気になったのですが、ラストを見て納得しました。

 画面を彩るのは、ダイアナが愛した沢山の花々。ダイアナの家のガーデンで咲き誇った花たちが、この悲しい物語を美しくオブラートに包んでいました。

 公式サイトで、ラストにどんな選択をダイアナはしたのか、その答えを監督が直々に語っています。それを見るためのキーワードは、エンドロール終了後に映し出されるキーワードが必要です。最後までお席を立たないでください。

流山の小地蔵