劇場公開日 2008年7月12日

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「白馬の王子の夢を叶える映画。女の子の夢ある映画に野暮な突っ込みは無駄ですね。」近距離恋愛 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0白馬の王子の夢を叶える映画。女の子の夢ある映画に野暮な突っ込みは無駄ですね。

2008年6月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 原題の『Maid of Honor』とは、花嫁付添い人のリーダーこと。いま公開中の映画『幸せになるための27のドレス』でも、花嫁付添い人が主人公になっていて、こっちの方の作品がこの風習について詳しく紹介されています。
 日本には無い習慣なのでピンと来ないでしょうけれど、初夜の勝負下着に至るまで結婚式の一切をプロデュースする役割の人を差します。
 ちなみにHonourとは、名詞で「名誉」意味する光栄なお役なんですね。通常は新婦側のエスコートを担当するので、BridalMaid全員が通例女性がするものになっています。それを男がやってしまうミスマッチぶりがこの作品のツボになっています。
 しかも、花嫁付添い人のリーダーに指名された男は、彼女の結婚が決まった直前に、彼女への恋心に目覚めてしまうから大変です。
 小地蔵にも経験はありますが、恋した人の結婚式の準備の買い物に付き合う心境というものは格別なものがありますね。
 というわけで、花嫁付添い人の習慣がない日本の観客でも、要するに花嫁奪還ドラマとして見れば楽しめるでしょう。『近距離恋愛』というタイトルは奇抜です。しかし実際はちょっと違っていて、親しすぎてお互いの気持ちに気がつかなかったふたりだったのです。
 それと最初の出会いが最悪で、主人公のトムは、学生寮時代に人違いで狙った人とは違うハンナを襲ってしまいます。そんなバツの悪さも災いして、すっかり仲のいい大親友となっていたのです。またトムはバツ6の父親を近くで見ていて、すっかり結婚に懐疑的になっていました。
 そんなハンナがスコットランドに出張中に、災難にあったとき出会った公爵家の青年に一目惚れ。一気に結婚が決まってしまいます。
 花嫁付添い人を頼まれてやっとトムの心にハンナの存在が、掛け替えのないものとして映り、一路奪還作戦に突入するというお話しです。
 但し、トムが奪還できたかどうか保障しません。絶対阻止不可能な状況に追い込まれていくのですから。

 すでに試写を見た人の中では、余りに唐突で強引なストーリー展開を酷評する人もいます。でも人が恋するときって分かりません。ハンナにとっては、困ったときに突如出現した白馬の王子様のようなもの。世界中の適齢期の女性なら夢見るお話しです。
 しかもスポーツ万能で、ジョントルマンときては、女たらしのトムですら「降参」する程のいい男だったのです。
 また、ハンナの婚約者の完璧さもいい伏線になっていました。完璧さは女心には時として不満にもなります。
 ハンナがトムと当たり前のように過ごしてきた習慣。そのちょっとした違いをフィアンセと思わず比べてしまいます。そんなところもちゃんと見せてくれます。
 さらに、トムの結婚観が変わるきっかけとして、休日に老夫婦が仲良くボートを漕いでいるところをじっと見つめるがありました。これは素敵な伏線と思いましたね。
 だから余り唐突さは感じさせませんでした。
 それだけトムを演じたパトリック・デンプシーが苦悩する演技が光っていたし、ハンナを演じるミシェル・モナハンの結婚が決まったとき見せる一目惚れの表情が真に迫っていましたよ。
 また舞台がニューヨークから後半はスコットランドへ飛んで、音楽もアイリッシュ調に変わります。豊かな自然に囲まれ、神秘的なスコットランドの風景が、愛の奇跡を呼び起こしそうなムードたっぷりで良かったと思います。

 結婚にあこがれを持つ方なら、気分を最高盛り上げてくれる夢のような映画でしょう。 カップルで見れば、いますぐにでも結婚したくなるかも?

流山の小地蔵