劇場公開日 2008年10月11日

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「たかが青春ドラマと侮れません。ラストの応援シーンは、きっと感動されることでしょう。」フレフレ少女 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5たかが青春ドラマと侮れません。ラストの応援シーンは、きっと感動されることでしょう。

2009年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 いまの時代では、文化遺産になりそうなくらい存在感がなくなりつつある応援団ですが、この映画を見ると、人を応援することがとても素敵に見えてきます。
 普通の女子高生が、突然祭り上げられて、自分の学校の野球部を、応援の力で甲子園に導くという、あり得ない設定に現実感をもたらした脚本と演出が、なかなか秀逸です。
 しかも、登場人物の応援に関わるエピソードにも、裏話をかぶせてあり、応援に絡んだそれぞれの人生観が語られます。その共通のメッセージは、どんな困難なことでも、思いを強く言葉に出していけば、切り抜けられるのだということ。そしてそんな強いこころを磨き込んでいるからこそ、人を応援できるのだということでした。

 応援というものにそんな力があるものかと思っていましたが、実際に本作の冒頭に見せられる新人応援団長の桃子と新人ばかりの団員による、蚊の鳴くような声や全然不揃いの声援を聞いて納得しました。
 そんな声援を受けた野球部の部員達は、タイミングを完全に狂わされて、試合で凡ミスを重ねたのです。

 そんな桃子たちも、応援団のOB達の特訓で逞しく変身していきます。余りの厳しさで途中逃げ出してしまうところにも、リアルティがありました。OB達もこりゃあダメだと匙を投げかけたときに、根を上げた団員達が戻ってくるところを嘘っぽくなくむクリアーしているのです。

 応援団のOB達の愛のムチの切れ味もなかなかでした。元団長なんか、会社を倒産させて応援団どころではないくせに、“滅私応援”で後輩達の指導に打ち込んでいるのです。 でもセリフにはなかったけれど、元団長の真剣さは、後輩達の頑張りが引き出していたのだと思います。ホントは、人生の崖っぷちに断たされた、元団長の方が応援されていたのだと。

 桃子を演じる新垣結衣が、すこぶるいいですね。蚊の鳴くような気の弱い女子高校生が、次第に学ランの団服を颯爽と着こなして、堂々たる応援団長に変身していくのです。この部分は、順取りで本人も合宿で猛特訓をしていたと言うから、ほぼドキュメンタリー状態。団長となってから、目がいっちゃっていました(^^ゞ
 まぁ、あの男っぽい出で立ちなら、女子高生からもファンが出てもおかしくないですね。そして桃子が普通の女の子に戻ったときの変身ぶりも見物。応援団で自信をつけた桃子は、女性としても輝きを増していたのでした。

 ラスト一番の見せ場となる、県大会の決勝戦のどん詰まりでは、桃子が放つこころからの叫び、これは凄く説得力がありました。あれなら負け試合をひっくり返す奇跡を呼び起こしそうです。
 あの声を出すまでに、そうとう新垣も頑張ったろうなと思います。

 本当に、あり得ない設定がひっくり返って、あれよあれよと桃子と応援団が本物に変わっていく様は、信じて突き進めば不可能なことはないのだという勇気が出てくるドラマでした。たかが青春ドラマと侮れません。ラストの応援シーンは、きっと感動されることでしょう。

 出来れば小地蔵ももっともっとこころを鍛えて、希望をなくした人を心から応援できるようになりたいものですね。

流山の小地蔵