劇場公開日 2003年12月13日

「緻密に練られたフィクションによるノンフィクションのような現実感」息子のまなざし keitaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5緻密に練られたフィクションによるノンフィクションのような現実感

2012年5月6日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

ダルデンヌ兄弟の究極に素朴な演出は究極の力強さを持っている。
食らいつくように密着した手持ちカメラの映像は、観客に追体験の感覚を持たせるとともに、写実主義の極致と言っても過言では無いほどの現実感を与えてくれる。

彼らは世界の圧倒的多数を占める"普通の人々"を主人公にそこに存在する複雑な感情を有するテーマを取り上げ、描く。
中でも今作は繊細で難しい。
"赦し"と"復讐"というテーマに徹底された写実主義でアプローチする。
その抑制された演出、俳優の演技は良くできている。
また、彼らの一番の上手さはその沈黙の演出にある。
何も語ら無い沈黙こそが、最も複雑で繊細な感情の発露の手段であることを心得ている。

世界のどこかに住む誰かの"人生の一部"を追ったドキュメンタリーであるかのようにリアルに映る映像は、緻密に計算された演出の賜物である。

keita