ミラノの奇蹟

劇場公開日:

解説

「自転車泥棒」のヴィットリオ・デ・シーカが監督した一九五一年度作品で、同年カンヌ国際映画祭においてグランプリを獲得した幻想的風刺劇。従来彼の協力者であったチェザーレ・ザヴァッティーニの原作『善人トト』から、デ・シーカ、ザヴァティニを中心にスーゾ・チェッキ・ダミーコ、マリオ・キアーリ、アドルフォ・フランチが協同でシナリオを書いている。撮影は、「揺れる大地」のG・R・アルド、音楽は「自転車泥棒」のアレッサンドロ・チコニーニの担当である。主演は「ローマの陽の下」のフランチェスコ・ゴリザーノ、舞台女優エンマ・グラマティカの他、ブルネラ・ボーヴォ、パオロ・ストッパ、グリエルモ・バルナーボで、多くは本映画のため特に起用された街の人々である。

1951年製作/100分/イタリア
原題または英題:Miracolo a Milano
配給:イタリフィルム=松竹
劇場公開日:1952年11月1日

ストーリー

ある日、小川のほとりにひとり住むロロッタ婆さん(エンマ・グラマティカ)は、裏のキャベツ畑から男の赤ん坊を拾い上げ、トトと名ずけて彼を育てることにした。トトが六歳になった時婆さんは死に、彼は十八歳になるまで孤児院に入れられた。ミラノの街に放り出された青年トト(フランチェスコ・ゴリザーノ)は無類に気の好い性格でその晩、乞食の爺さんと知り合い街外れの広場にある堀立小屋に泊めて貰うことになった。春になりトトはこの広場にあり合せの材料を集めて、貧しい人々のための集落を作りはじめた。家のない人々は続々と集って来、トトは彼らの間を飛びまわっては喧嘩の仲裁をしたり、宿の割り振りに心を砕いたりした。集落完成記念の祝賀会の夜、広場の真中から石油が噴き出すという事件が起った。集落中の天邪鬼ラッピ(パオロ・ストッパ)は、早速この広場の所有者である資本家モッビ(グリエルモ・バルナーボ)の所に駆けつけて急を知らせた。モッピは、それまで貧民の友のような顔付きをしていたが、早速広場の接収にかかり、住民が反対するとみるや私兵を差し向けて武力で追立てをはじめた。この時、天から降りて来たロロッタ婆さんの霊は、すべての望みを叶える天の鳩をトトに与えた。トトはこの鳩を使ってモッビの軍勢を悩まし、広場を救ったが、住民達はその鳩の威力に目をつけて各々私腹を肥すための金品をほしがり始めた。気のいいトトは、人々の言うなりに鳩を利用したが、それを傍から心配しつづけたのは彼に想いを寄せるエドウィジェ(ブルネラ・ボーヴォ)という娘であった。天使は広場の乱脈ぶりを見て、トトの知らぬ間に鳩を取返してしまったので、忽ちモッビの軍勢は広揚に雪崩こみ、住民はトトもろとも、檻獄馬車につみ込まれた。馬車がミラノの大伽藍の前へさしかかった時、やっとエドウィジェとロロッタの霊は鳩を取戻してトトに渡した。住民達は馬車から逃れ出た。こうして、トト達は、市街清掃作業員の帚に打乗り、善良さがそのまま通用する理想の国へ向って、空高く飛去って行ったのであった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

5.0プロレタリアートとブルジョアジーの対立を止揚する神の奇蹟なのです

2021年10月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1951年のカンヌ国際映画祭グランプリ作品

なんだか不思議な映画です
監督のこの作品の前作はかの名作「自転車泥棒」です

幻想的風刺劇のようで、実はこの作品もまたネオレアリズモなのかも知れません

「靴みがき」や「自転車泥棒」のように、重い悲惨な現実をそのまま活写するのではなく、このように童話じみた話にすることでより主題を明確にしていると思います
そこが本作にグランプリをもたらした理由であると思います

掘っ建て小屋とも言えない、ダンボール小屋が御殿のようなバラックの貧民窟
そこの人々の暮らし

かと思えば復興再開発に躍起の金持ち達との対比

最終的には神の救いとなりますが、もちろんそんな事がある訳はないのは誰もが分かっていること

ミラノの奇蹟
そんなことがあってもいいじゃないか
そういう希望なのです

そもそもそも主人公も神が地上に下された赤子であったのです

プロレタリアートとブルジョアジーの対立を止揚する神の奇蹟なのです

貧民を政治利用し、扇動しようとする在り方への平和的な反論に感じられました

名作です

コメントする (0件)
共感した! 1件)
あき240

3.0 鞄を置き引きされても、盗んだホームレスに鞄をあげてしまうトト。寒...

2020年12月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 鞄を置き引きされても、盗んだホームレスに鞄をあげてしまうトト。寒い冬、わずかな太陽光線の円の中に集まる人々。一等席の車窓に見える裕福な人と浮浪者たちとのコントラスト。バラックを建て始めた周りには、やはり戦後の高層アパートが建てられていた。

 集団になるとすごい!モッビ氏所有の土地だったが、民衆が資本家を追い出してしまう。やがて石油を発掘し、居座ってからは、それほど面白くなくなるが、警察がやってきた時、ロロッタおばさんが天使となってトトのもとへ現れ、願いの叶うハトを置いていく。これだけ面白い内容なのだから、敢えてファンタジー色を強く出さなくてもいいとは思うのだが・・・

 明るくて「生きてることが素晴らしい」と言うトトが爽やか。終わったら、誰とでも明るく挨拶したくなります・・・

コメントする (0件)
共感した! 1件)
kossy