劇場公開日 2024年3月22日

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「50年近く再三観てきた筈なのに、面白さに衝撃」荒野の用心棒 アンディ・ロビンソンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.050年近く再三観てきた筈なのに、面白さに衝撃

2024年4月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD、その他、映画館、TV地上波

元が「黒澤監督作品の『用心棒』の(無許諾)翻案作品」として認識された経緯と、亜流西部劇といういかがわしさ漂う印象から、格下のB級的扱いに甘んじた作品というイメージがある。

それが、今回テクニスコープのワイドスクリーンでの、半世紀以上ぶりの公開実現を知り、身震いした。
上記の事情により、権利元である黒澤プロの許可なくして劇場公開は不可能なため、今回は極めて異例と言える。

念願の劇場初鑑賞を果たした今回は、ストーリーラインこそ原案「用心棒」に添ってのモノではあるもののテンポの良い演出と、洗練された映像は飽きさせる事なく、まるで初鑑賞作品の如く引き込まれた事に、自身驚きを覚えるとともに感嘆させられた。

TV初放送以降、再放送、ビデオ、LD、DVDと形を変えて何度となく繰り返し鑑賞している作品である事を忘れる。

初期LDまではトリミングのスタンダードサイズ状態でしか観られなかったのが、後期にワイド版でも発売され、テクニスコープの画角を生かしての構図や演出の全貌が初めて分かった気がした事が記憶に残っている。

その後、イタリア旅行の機会に現地でマカロニ関連モノが手に入るのでは無いかと考えて期待していたが、向こうでは何かを見つけることは出来なかった。

更にその後、初期イタリア発売版のオリジナル伊版DVDにて、ガンマン三部作とワンスアポンナの2作品目までを個人輸入で手に入れる事が叶った事で、「これで念願を果たして一区切り」と考えていた、筈だった….

正直、今回はどちらかと言えば先行上映されたうちの「夕陽の..」の方にウエイトを置いての鑑賞のつもりだったのに、蓋を開けてみたら「荒野の用心棒」にグイグイ引き込まれてしまった。
まるで、初鑑賞作品の如く(暫く観ないでおくようにしてはいるので)、修復された画像の綺麗さも手伝い、新鮮さを覚える程。
そういえば、数年前に超絶的な修復を遂げた『続荒野の用心棒』を劇場鑑賞した際にも、同様の感覚を覚えた事を思い出す。

あと、タイトルの方は“we can fight”で、
劇中のは“with the wind”だったりとかも再認識した。

蛇足ながら、
“無許諾制作”の件については、制作サイドから「事前の打診」の文書が東宝宛に送られていたにも関わらず、東宝がこれを黙殺して黒澤サイドに伝えられないままだったという事が後に発覚している。。
イタリア側はダメ出しの返事がなかった事で、勝手に可と解釈して制作に踏み切ったというのが真相。
この件から、黒澤サイドは東宝に不信感を抱く結果となり、長年のパートナー関係の解消へと発展していく切っ掛けとなったとされている。

アンディ・ロビンソン