来るべき世界

解説

物故したH・G・ウェルズ作の小説を作者自らシナリオ化したものによって「波止場の天使」を共同監督したウィリアム・キャメロン・メンジースが監督に当り、「ドン・ファン」「コンゴウ部隊」のジョルジュ・ペリナルが撮影した。主なる出演者は「紅はこべ」のレイモンド・マッセイ、「月光石」のラルフ・リチャードソン、「虚栄の市」のセドリック・ハードウィック、「朱金昭」のパール・アージル、「花咲く頃」のエドワード・チャップマン、「幽霊西へ行く」のパトリシア・ヒリヤード、ケネス・ヴィリアス、モーリス・ブラッデル、ソフィー・スチュワート等である。セットは例の如くヴィンセント・コルダが設計し、音楽はアーサー・ブリスが担当している。

1936年製作/113分/イギリス
原題または英題:Things To Come

ストーリー

一九四〇年の降誕祭前夜、エヴリタウンに住む航空技師ジョン・キャバルは自宅で新聞を手にしていた。「切迫せる国際関係一万台の飛行機組立」記事は動揺せる各国の情勢を報じている。ここへ若い医師ハーディングとその友バスウァージイが来訪する。夜半エヴリタウンは突如来襲した敵機に大半を破壊された。戦争は二十年の長きに渡って継続した。世界の文明は殆ど戦禍の為に破壊され、人類は原始的な生活に還った。やがて廃墟同然なエヴリタウンを襲ったのは疫病であった。不思議な「彷徨病」に取り憑かれた市民は日々エヴリタウンに増していく。ハーディング医師は既に齢五十に近かったが、日夜研究室に篭って娘のメリイと共にこの解毒剤の発明に没頭していた。一九七〇年、エヴリタウンは漸く戦禍と疫病の極端な荒廃期を脱して復興の途につきだした。街は今強力な支配者の統制下にある。飛行家のゴードンは格納庫で飛行機の手入れをしていた。だが全市を探しても僅か三ガロンのガソリンしか手に入らないのだ。飛行は到底不可能である。その夕方一台の飛行機が飛んで来た。操縦士は会ってのジョン・キャバルであった。彼は支配者の前に曳き出され、エヴリタウンの新戦争に参加する事を強いられたが、これを拒絶したため檻禁された。ゴードンはキャバルの機を密かに取出し、近代科学の都市バラスへ飛翔した。間もなく彼の先導によって飛来した一群の飛行機の為にエヴリタウンは征服され科学の統治する新世界が建設された。二〇五四年、エヴリタウンは地下都市として完全な形態を備えるに至った。月の世界へ人類を運ぶ「空中砲」が完成され、人々は競ってこれの搭乗を希望している。しかし一方止まる事の無い科学の進歩に叛く人々があった。「空中砲を破壊せよ」の声が街に高まる。やがてそれが行動に移されようとする直前、キャバルの娘とその恋人を乗せた巨大な空中砲は月世界を目がけて発射され、叛乱の群集は空しく街へ帰って行った。

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映画レビュー

3.5戦争と未来図

2023年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

H.G.ウェルズ原作を得て、ウィリアム・キャメロン・メンジーズ監督が作り上げたSF映画大作。

原作者H.G.ウェルズ自らの脚本は、世界大戦で壊滅的なイギリスの一都市を舞台とし、前半は戦争色の濃い作風、後半は同じ都市とは思えない未来的作風によって描かれる流れが見事。

観る前は、タイトルとDVDジャケットから「フリッツ・ラングの『メトロポリス』みたいな映画かな?」と思っていたが、本作は「戦争を通じての歴史的観念」を軸にしていることに驚かされる1936年作品である。
また、都市空間の未来図を描いたSF場面が、やはり素晴らしい!

ただ、「夢遊病って伝染するの?」というのは気になった…(笑)

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たいちぃ