季節のはざまで

劇場公開日:

季節のはざまで

解説

「ラ・パロマ」「ヘカテ」などで知られるスイスの名匠ダニエル・シュミット監督が、スイス山中の古いホテルで育った男性が少年時代を回想する姿を、シュミット監督自身の記憶を反映させながらつづったドラマ。

スイス山中でホテルを経営する祖父母に育てられた中年男性ヴァランタンは、ホテルが取り壊されることを知り、記憶を頼りに現地を訪れる。ヴァランタンは無人と化したホテル内を歩きながら、少年時代の懐かしい記憶を思い起こしていく。

「はなればなれに」「夕なぎ」のサミー・フレイが主人公ヴァランタンを好演し、「ラ・パロマ」のイングリット・カーフェン、「海辺のポーリーヌ」のアリエル・ドンバール、「チャーリー」のジェラルディン・チャップリンら豪華キャストが共演。2024年3月、デジタルリマスター版にてリバイバル公開。

1992年製作/92分/スイス・ドイツ・フランス合作
原題:Hors saison
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
劇場公開日:2024年3月8日

その他の公開日:1993年7月10日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

3.0度々、映画に

2024年4月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

負けて睡魔に屈してしまったけれど、お話はどれも面白い。いつもラケットを持たせているのは開き直りか? 「グランドブダペストホテル」と似たようなお話だが、色合いが全然違う。ささやかなホテルの愉しみ、次こそは他ヘ行く! と言う気持ちが何か解る気がする。主人公の大人になった容貌は想像を絶してましたが、少年期はトトくん並の可愛らしさ。

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トミー

4.0不思議な映画でした。(2)

Mさん
2024年4月22日
Androidアプリから投稿

先日見た「異人たち」より「異人たちの夏」に近かったような気がしました。

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M

4.5語り手の過去の過去のそのまた過去が積み重なっているホテル

2024年4月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

幸せ

萌える

スイスの豪奢なホテル。語り手の祖母(演じるのはフェリーニの妹!)が経営するそのホテルはヨーロッパ、いや世界中からリッチな客がスイスの山々、涼しさ、美味しさ、セレブの雰囲気を求めてやってくる。仕事口求めてもいろんな人が来る。

この映画の語り手であるヴァランタン、取り壊しになると聞いて懐かしいホテルに向かう。広くてゴージャスで大きなホテル。でも今、目の前にあるホテルの廊下もバーもロビーも埃っぽく家具もない。捨てることができず何でもとっておく祖母のトランクの中にある物を屋根裏部屋に見つけて思い出が広がる。

ヴァランタンがまだ6~7歳の頃。祖父母とそのホテルに住みハイシーズンは屋根裏部屋、オフシーズンにはいい部屋に住むから季節の変わり目ごとに祖父母と共にトランク沢山持ってホテル内の素敵な階段を上り下りする場面が何度も繰り返される。それほど男の子、ヴァランタンにとってウキウキする時期だったんだろう。

祖母にねだるお話はいつも同じだけれど少しずつ変化がある。私達も子どものヴァランタンと一緒にわくわくとおばあちゃんの話を聞く。

サラ・ベルナールが話に登場するのはおじいちゃんがとっても若くてロンドンのホテル・サボイのレストランのウェイターをしていたときのこと。20世紀のほんの前半だろう。その後おじいちゃんはおばあちゃんに出会い結婚した。おばあちゃんはテキパキ女性。ダニエル・シュミットの映画の特徴、強い女に男がついて行く。だからママと息子(子どもというより大きくて小太り)の組み合わせもよく登場する。

20~30年代に青春あるいは人生の成熟期を過ごした人達にとって、その頃のドイツはベルリンで花を咲かせたキャバレー、歌、映画が忘れられない。だから戦後、ヴァランタンが子どもの頃も、ホテルの晩に望まれる歌は新しいアメリカの歌でなくて古い歌。客の年齢層が高いから。そうするとどうしてもドイツはベルリンとなる。マレーネ・ディートリヒを彷彿とさせるようなドイツ語の歌。第二次大戦で嫌な思いをした人もいるから「またドイツか!」と嫌な顔をするおじいちゃんお客さんもいる。でも歌い手(演じるのはイングリット・カーフェン;フライヤー見ながら書いてるから大変!全然知らないから。知ってるのはシュミット監督の映画「ラ・パロマ」に魅了されたという私の過去だけだ)は魅力的で子どものヴァランタンに優しい。彼女のドイツ語の歌は本当に素敵。サントラ欲しい。

家具もテーブルも照明も、どの客も素敵な衣装、アクセサリー、ヘアスタイル、メイク、帽子、おしゃべりとオーラ。そんな彼らが羽目を外す。ブレヒトの「三文オペラ」の扮装をして。

ダニエル・シュミット監督の自伝でもあるようなこの映画がファンから特に愛されていることがよくわかった。海がないスイスに「海が見える部屋」を用意しておくホテル。なんて素敵なんだろう。この映画ならいつでも夢を見ることができる。

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talisman

5.0スイスの山中に建つ古いホテルの話

2024年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

知的

季節のはざまで デジタルリマスター版
神戸新開地にあるCinema KOBE(シネマ神戸)にて鑑賞2024年4月7日(日)

原題は「季節外れ」の意。つまりホテルの閑散期を指す

ひとりの中年男が自身が幼い日々を過ごした朽ちた建物を訪れる。取り壊し寸前のその建物は、かつて男の祖父母が、スイス・アルプスを来訪した富裕層向けに経営していたリゾート・ホテル「アルビナ=パラス・ホテル」である。再訪のきっかては、知人女性からの一本の電話だった。その女性は、かつて勤務してたアニー・ガブリエルの友人で、今や老いて施設で暮らす彼女に会いに行ってやってほしい、と言うのだった。アニーと久々の再会を果たし、ミッキーマウスの漫画をめぐる思い出に浸った後、この老嬢はホテルが壊される前に「海の見える部屋」に漫画のコレクションを探しにいってもらいたい、と男に頼む。

その後、ひとけのない寒々としたモノトーンのホテル内を歩き回る、名前のわからない男は、はるか昔に売却されたこのホテルで成長した幼い日々を回想し始めることで、物語の語り手を務め始める。回想の中では、ホテルは暖かな光に包まれ、従業員や滞在客でいっぱいの、活気ある空間として「現在」の姿と対照されるだろう。それにかつてのホテルは、豊かな感受性と創造力に恵まれた少年=語り手(回想の中で、ヴァランタン(ヴァランタン/中年 サミーフレイ /少年 カルロス・デベーザ)という名だとわかる)にとって、大人たちの秘密に満ちた、と同時にいまだ目にしたことがない広い世界に通じる、どこか神秘的な場所だ。

ヴァランタンはこの過去の世界で、少年時代に出会った様々な人物をよみがえらせる。たとえば、繁忙期の六月と九月にホテルへ訪れて、読唇術を始めようとする出し物を披露する魔術師のマリーニ教授。夜な夜な食堂のワインを盗むこのマリーニは、滞在客らを睡眠術をかけて、サハラ砂漠の照り付ける太陽の下にいるものと思い込ませ、服を脱がせるにいたらしたことで、醜聞を招く。そして、ヴァランタンにミッキーマウスの漫画雑誌をくれる、かつて北米に暮らしていたことがある新聞雑誌売店のガブリエル嬢。少年は彼女がミッキーマウスの漫画の作者だと思い込む。さらにバーの雰囲気を盛り立てるのに一役買う、ピアニストのマックスと歌手のリロ(イングリット・カーフェン)。それにもちろん、個性豊かな宿泊客たち。

ヴァランタンの一家は、季節の変わり目ごとに自分たちの生活空間を変える。書き入れ時には屋根裏部屋、その前夜は二階、閑散期には一階に移動するするのである。つまり彼らの「家」はホテルの空間を始終あちこち移り変わっており、宿泊客がいなければ、一家が姿をあらわすのだった。

少年ヴァランタンはおばあちゃん子で、卓越した語り部であるこのしっかり者の祖母が話して聞かせる「実話」の数々は、いわば「(中年ヴァランタン)の回想の中の回想」あるいは枠物語のかたちを探りながら、その奇妙で神秘な世界で少年を魅了する。

たとえば、ホテルのなかで外務大臣と間違えて下着商を銃殺あと自殺したロシアのアナキストの話や、祖母はかつて祖父が、サラ・ベルナールの寵愛を受けたことが大の自慢だった。

給仕としてロンドンのサヴォイ・ホテルで働いていた祖父はサラのお気に入りだったが、ある日つまらない理由で解雇され、それを知った、かの大女優は烈火のごとく怒って彼を復職させたのだ。祖父は目を悪くしていたが、歩き方だけでお客が誰か分かる、ホテルのフロントが天職の人だった。そして、シーズンが終りに近づくと、上得意のお客と一家の間で特別の仮装パーティが開かれるのが少年ヴァランタンの楽しみで、それは賑やかで夢のように楽しいひとときであった。

監督ダニエル・シュミット
1992年 スイス=ドイツ=フランス

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大岸弦
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