汚名

劇場公開日:

解説

「断崖」「疑惑の影」のアルフレッド・ヒッチコックが「ガス燈」「ジキル博士とハイド氏(1941)」のイングリッド・バーグマンと「独身者と女学生」のケーリー・グラントを主役として監督した1946年作品。脚本は「運命の饗宴」やヒッチコック作品「呪縛」のベン・ヘクトが書き下ろしたもので、撮影は現在監督に転じて名を挙げている「春を手さぐる」等のテッド・テズラフで、音楽は「ママの思い出」のロイ・ウェッブが作曲した。助演はクロード・レインズ、「ゾラの生涯」のルイス・カルハーン、映画初出演の舞台女優レオポルディーン・コンスタンチン、「少年牧場」のモローニ・オルセン、かつてドイツ映画の監督だったラインホルト・シュンツェルその他である。

1946年製作/アメリカ
原題:Notorious
劇場公開日:1949年11月1日

ストーリー

アリシア・ハバーマンは売国奴の父を持ったために心ならずも悪名高き女として全米に宣伝されていた。ある夜うさ晴らしに開いたパーティで、彼女はデブリンというアメリカの連邦警察官と知り合った。デブリンは南米に策動するナチ一味を探る重要な職務にあった。首謀者セバスチャンをよく知っているアリシアを利用する目的で近づいたのだったが、やがて彼女に強く引かれるようになった。一緒に南米に行き、リオ・デ・ジャネイロでの楽しいあけくれに、二人の愛情は日毎に深まり、アリシアはデブリンの愛によって、その昔の純情さを取り戻していった。が間もなく、彼女は命令で首領セバスチャンを探ることになったが、彼が以前父親の相棒だったことから、アリシアは容易にセバスチャン邸に入り込むことに成功し計画通りに彼は彼女を恋するようになった。一夜、彼の邸でナチスパイ連の晩餐会が催されたが、その時出された一本のぶどう酒に対するハブカの態度とそれに次いで起こった彼の変死にアリシアは強い疑念を持った。セバスチャンの花嫁となった彼女は、家中を見回ることが出来たが、地下室の酒蔵にだけは入れなかった。デブリンとの打ち合わせによって、一夜またパーティが催され、アリシアは酒蔵の鍵をセバスチャンから盗み取りデブリンに渡した。目的の酒瓶を辛うじて盗み出して彼は逃げ去ったが、嫉妬から絶えずデブリンを監視していたセバスチャンはかぎつけてしまった。ぶどう酒の瓶を見て取り乱したハブカの殺された前例からも、セバスチャンはアリシアが酒蔵を調べた事を仲間に疑われてはならなかった。母親と二人の共謀で、アリシアは毒入りコーヒーで徐々に死へ導かれていった。一方例の酒瓶の中には原子爆弾のウラニウム鉱が入れてあることが分かった。アリシアは病み衰えながらも、ウラニウムの出所を聞き出そうとたえず気を配ったが、アンダーソン博士の不用意に口から出た言葉でそれを悟った。使命を終えて逃れようとしたアリシアは力つきて倒れてしまった。だが敵中に唯一人とり残されたアリシアの許にデブリンはかけつけた。愛する者の敏感さで、デブリンは彼女の身の危険を感じたのだ。デブリンのアリシア救出によって、ナチ仲間はセバスチャンの失策を知った。セバスチャンには死の制裁が下された。アリシアがデブリンの愛によって全快する日は恐らく間もないだろう。

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映画レビュー

4.0【ナチスドイツのスパイであった女性と、FBI捜査官との恋を描いたラヴ・ストーリー。】

2024年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■イツのスパイ容疑がかけられた父を持つアリシア(イングリッド・バーグマン)は、売国奴として世間の非難を浴びていた。
 そんな彼女にFBI捜査官・デブリン(ケイリー・グラント)が近づく。
 デブリンはナチ一味を探る職務に就いていて、追っているセバスチャンをよく知るアリシアを利用しようとした。

◆感想

・私が見た中でのイングリッド・バーグマン主演の映画作としては今作は異色である。但し、イングリット・バーグマンのそれまで気付かなった低音ヴォイスが魅力的である。
ー 敢えて、低音ヴォイスにしたのかは分からない。-

・ストーリー展開は、分かりやすいのであるが、私が生まれる遥か前の映画って、何でこんなに、気品ある作品になるのかな、と思った作品である。

<イングリッド・バーグマンの、それまでの陰のある女性を演じる姿と共に、新境地を求めた作品なのかな、と思った作品である。>

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NOBU

3.0ヒッチコックにしてはメリハリが足りない

2023年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

なんとヒロインが父のスパイ容疑で酒浸り。
そんな汚名を返上すべく?奮闘しつつ
惚れた男のために頑張る。

と書くと健気にさえ感じる。
とはいえイングリッド・バーグマンが
健気というテイストの美人ではなく
キリッとしてる顔立ちなので
やさぐれ感が勝ってしまう。

全体は安定して楽しく見られるのだけど
ヒッチコックならば、もっと
ハラハラとする場面、展開が
来るのではないかと期待してたら
萎んで終わってしまった。

絶望的なその後を迎えるだろう夫の
背中の終わり方はしびれるが。
しかしそこまで酷い夫でもなかったので
哀れに思った。

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こまめぞう

4.01分半で47カット!

2022年12月21日
iPhoneアプリから投稿

自由闊達なカメラワークとカッティングが光るヒッチコックらしい一作。サスペンスとメロドラマが絶え間なく相互嵌入する筋立てはいかにも正統なるフィルム・ノワールといった風格だ。硬派気取りのケーリー・グラントがあれよあれよという間にイングリッド・バーグマンの健気な魔性に魅入られていく流れは凡庸といえばそれまでだが、とはいえこんなに美しい女が目の前に現れたら誰だって仕方ないよな…という視覚的説得力がバーグマンにはある。

ヒッチコックは作品ごとに異なるアプローチでカメラワークやカッティングの決まりごとを脱臼させていく。『めまい』ではカメラを素早く手前にドリーしながら対象をズームすることで高所恐怖症患者の不安定な心境を表現し、『ロープ』ではロングショットを繋げていくことで疑似的な全編ワンカット映画を成立させ、『裏窓』では怪我で自宅療養中の男の視線にカメラを局限することで観客にVR的なスリルと没入感をもたらした。

かくして映画史的パラダイムシフトを次から次へと引き起こしていったのがヒッチコックという監督だ。しかし彼は過去作の分析的批評に端を発するヌーヴェルヴァーグやそれ以降のいわゆる芸術映画などとは根本的にスタンスを異にしている。彼はただ「観客によりビックリしてほしい」というただその一点に心血を注いだ結果、図らずもその名を映画史に刻んでしまったのだ。古代の平民が使っていた皿や壺が実のところとんでもない超技術によって焼き上げられていた、みたいな話はよくあるが、それの映画版がヒッチコックだ。

さて本作の最もヒッチコックらしいポイントは、言わずもがなラスト数分の目まぐるしいカット割りだ。映画評論家の北村匡平が分析したところによると、グランド演じるデヴリンとバーグマン演じるアリシアが屋敷から脱出するまでのわずか1分半の間に、カットが47回も切り替わっているという(『24フレームの映画学』)。今でこそ目まぐるしいカット割り演出はそこそこの頻度で見かけることがあるが、それでも1940年代に平均して2秒に1回のカットというのは常軌を逸している。

やっていることといえば、親ドイツ労働者党の紳士たちが向ける疑惑の視線を素通りして屋敷の外に出て行くというただそれだけのことなのだが、そこには視線の動き一つで全てがひっくり返ってしまうのではないかと思われるような緊張感がある。とにかく目、視線だ。目が口に先んじて全てを語っている映画だ。たとえ無音でも登場人物たちの視線の動きを追えばなんとなく何をしているのかがわかる。特にセバスチャンの目はすごい。彼の目は蛇のように屋敷じゅうを這い回り、鍵の増減やワイン室での隠蔽工作を目ざとく発見する。

後半の緊張感溢れる雰囲気に比して前半はかなり脳天気でユルユルだ。まるで違う映画のようでさえある。ヒッチコックなんかつまんねーよ!と知人に苦情を言われたことがあるが、理由を訊いてみると前半の退屈さに耐えきれなかったからだという。確かに、あのヒッチコックなんだから徹頭徹尾宙吊りの緊張感に晒されるんだろうな…などと覚悟してかかると、意外にも肩透かしを喰らうことは多い。けどそこがいい。やはりヒッチコックは映画史に名を刻む芸術家である前に、愚かなるアメリカ国民に奉仕する職業監督なのだ。初めのうちはポップコーンをコーラで流し込んでボーッと画面を見上げていても理解できるような平々凡々の話を垂れ流しておいて、次第にギアを上げていく。そして最後にはトイレに行くのも忘れるほどの張り詰めたサスペンスとカタルシスをお見舞いする。

映画内のみならず観客の様相をも自由自在に操作してしまうヒッチコックはやっぱりすごいな、と改めて思った。

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因果

3.5イングリッド・バーグマンの美しい横顔と唇

2021年11月30日
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