劇場公開日 1979年4月14日

「中身は普段のウディ・アレン」インテリア 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5中身は普段のウディ・アレン

2023年7月6日
iPhoneアプリから投稿

私立大学のいけ好かない文化系コミュニティっぽい空気感を醸出することにかけては右に出る者がいないウディ・アレン。自らの作風を張り詰めた静謐の中に封じ込めてみたところで会話の節々に各々の強烈なエゴイズムが滲み出す。才能と成功をめぐる姉妹の愛憎、父母への屈折した感情。完全無欠な空間美学の隙間から溢れ出した自意識は行き場を失ったまま部屋の中を徘徊し、遂には不可逆的な破綻をもたらす。作風こそ異色だが、中身はいつものウディ・アレンという感じ。ただまあやっぱりウディ・アレンの真骨頂は軽妙だが空疎な会話劇にあると思うから、ここまで極端にミニマムな作りだと少々退屈する。あるいは俺こういうのも作れるんですよ、というウディ・アレンのしたり顔が目に浮かんで気が滅入る。やっぱり『アニー・ホール』くらいアッパーなほうが楽しいめるし悲しめる。そう、悲しめるのだ。

因果