劇場公開日 1979年4月14日

「眼鏡の彼女には4年後に「ガープの世界」で再び会えることに…」インテリア KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0眼鏡の彼女には4年後に「ガープの世界」で再び会えることに…

2021年8月16日
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鑑賞方法:DVD/BD

公開当時に印象深かったので、
ウディ・アレン作品の中でも
最も再鑑賞したかった映画だったが、
現代と異なり、当時は簡単に再び観れる環境
はなく、今日まで延び延びになって
しまっていた作品だ。

「アニー・ホール」の次作品にしては
打って変わって重々しいテーマの映画で、
同じ監督の作品とは思えない位だ。
アレン作品の中でも心惹かれていたのは、
解説によるとベルイマン調を狙ったと
あったので、
少しベルイマンをかじった者として
共通性を感じたためだったかも知れない。

インテリアのプロとしては完璧でも
周りへの思い遣りも無く、
しかもその好みを押し付けられては
家族にとっては迷惑千万だが、
そんな権力的な振る舞いに家族はそれなりに
反抗するものの抗しきれず、
悶々としているのは
ヨーロッパの臭いや日本的な感じを受ける。
米国イズムだったら、
次女の強い叱咤が母の死の引き金になった
ものの、普段からもっと強い自己主張で
反抗しそうなものだ。
ウディ・アレンはどちらかというと
ヨーロッパ気質に近く、
それがヨーロッパを舞台にした名作が
後年に多い理由ではないかと
勝手な想像もしてしまう。

さて、この映画、
ウディ・アレンの中では好きな作品だが、
ラストシーンで
母が突然現れて入水するラストの唐突感と、
問題を全て母の気質に起因させたのは
少し底浅い印象を受ける。
ロバート・レッドフォード監督の
「普通の人々」もそんなイメージがあった
ことが思い出される。

また、「アニー・ホール」に続いて
この作品でも精神治療や薬物依存の場面が
出てきたが、彼の作品の中で
繰り返し描かないといけないほど、
日常的なことなのか、或いは徹底して
皮肉りたい事象なのか、私には謎のままだ。

ところで、この作品で心惹かれた次女役の
“メアリー・ベス・ハート”
だが、4年後により素敵なイメージで
「ガープの世界」で会えることになったのは
嬉しいばかりだった。
眼鏡を掛けた女優としては最初の
スクリーンの恋人だったかも知れない。

KENZO一級建築士事務所