劇場公開日 1959年10月25日

「オールスター東宝祭」日本誕生 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0オールスター東宝祭

2017年6月27日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

単純

興奮

東宝映画1000本記念作。1959年の作品。
「古事記」「日本書記」を題材にした神話スペクタクル。
三船敏郎を始めオールスターキャスト。上映時間は3時間。
“THE超大作”。

スケール豊か、見せ場もふんだんに設け、日本神話を見易い娯楽活劇になっている。
しかし、演出や各々のエピソードは単調と言うか平凡と言うか、超一流スターたちが仮装して大真面目にやってる学芸会と言うか、そんな印象は否めない。
主だったストーリーを順々に…

この世の始まり。多くの神々が生まれ、伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)の二人の神による国造り。
最も幻想的でなければならない開幕シーン。特撮は雰囲気を醸し出してはいるものの、演者が出ると急にチープな演劇風に。
八百万の神や高天原の神といった神々を演じるは、沢村いき雄ら東宝の名脇役たち!

話の主軸は、小碓命(オウスノミコト)後の日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の冒険詩。
兄・大碓命(オオウスノミコト)とのいざこざから大和の国を追われ、熊曾建(クマソタケル)兄弟征伐を命じられる。激闘の末目的を果たし、クマソ弟からヤマトタケルの名を与えられ…。
東宝は1994年にもRPG風の「ヤマトタケル」としても製作。
意気揚々帰国するも、休む間も無く東国征伐を命じられる。裏には、権力争いの陰謀が…。
敵ながら男気を見たクマソ弟、弟橘姫(オトタチバナヒメ)との悲恋、おばの倭姫命(ヤマトヒメノミコト)の教えを通じて、争う醜さ、虚しさを知るも、ヤマトタケルを亡き者にしようとする刺客たちが迫り…。
三船敏郎がさすがの力演。でも、ちょっと力み過ぎてる気も…。
どうしても思い出してしまうのは、クマソ兄に近付く為の三船の女装姿!

中盤挿入される天照大神(アマテラスオオミカミ)の天岩戸隠れ。舞い踊りは伊福部昭の迫力ある音楽も相まって、力強いシーンになっている。
特撮面一番の見せ場は、須佐之男(スサノオノミコト)の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治。
一転して、怪獣映画のような様式になるも、オロチのデザインや動きがちとチープ、八つの山と八つの谷をまたがる巨大さながら大きく見えたり小さく見えたりサイズ感が均等しない東宝特撮あるある。
どうでもいい余談だが、オロチは初代キングギドラのモデル。スサノオノミコトが退治の際にオロチに呑ませたのが“八塩折之酒”、即ち「シン・ゴジラ」の“ヤシオリ作戦”の語源である。
特撮面ではクライマックスの天変地異も大きな見せ場。大噴火、煮えたぎるマグマなどなかなかの迫力で、これぞ円谷特撮演出!

全体的には、まあまあといった所。
「十戒」や「ベン・ハー」などのハリウッド・スペクタクルと比べると、どうしても見劣り。
でも、映像化された日本神話の数々は興味尽きる事は無い。
加えて、日本神話に真っ正面から挑んだ東宝の意欲に座布団一枚!
現在の最新技術を駆使した映像表現、独自の解釈・新解釈で映画化してみてもいいかも。

近大