楢山節考(1958)

劇場公開日:

解説

中央公論新人賞を受賞した深沢七郎の同名小説の映画化。脚色、監督は「風前の灯」の木下恵介、撮影も同じく「風前の灯」の楠田浩之が担当した。主演は「悲しみは女だけに」の田中絹代、望月優子、「その手にのるな」の高橋貞二、その他東野英治郎、宮口精二、伊藤雄之助などのベテラン。色彩は富士カラー。

1958年製作/98分/日本
原題または英題:Ballad of the Narayama
配給:松竹
劇場公開日:1958年6月1日

ストーリー

山また山の奥の日陰の村。--六十九歳のおりんは亭主に死に別れたあと、これも去年嫁に死なれた息子の辰平と孫のけさ吉たちの世話をしながら、息子の後妻をさがしていた。村では七十になると楢山まいりに行くことになっていた。楢山まいりとは姥捨のことである。働き者のおりんはお山まいりの支度に余念ない。やがて村一番の行事である楢山祭りの日、隣村から辰平の嫁が来た。お玉といい、年も辰平と同じ四十五である。気だてのいい女で、おりんは安心して楢山へ行けると思った。だがもう一つしなければならぬことがある。おりんの歯は子供たちの唄にうたわれるほど立派だった。歯が丈夫だということは、食糧の乏しい村の年寄りとしては恥かしいことである。そこでおりんは自分の歯を石臼にぶつけて欠いた。これで支度はすっかり出来上り、あとは冬を待つばかりである。おりんの隣家は銭屋といい、七十才の又やんと強欲なその伜が住んでいた。又やんはなかなか山へ行く気配がなく、村では振舞支度が惜しいからだと噂していた。おりんの家では女がまた一人ふえた。けさ吉の子を姙っている松やんである。彼女は家事は下手だが食物だけはよく食った。木枯が吹く頃、雨屋の亭主が近所に豆泥棒に入り、捕って重い制裁をうけた。そして雨屋の一家十二人は村から消された。おりんはねずみっ子(曽孫)が生れるまでに楢山へ行かねばと決心し、あと四日で正月という日、「明日山へ行く」といい出した。辰平をせかして山へ行ったことのある人々を招び、酒を振舞ってお山まいりの作法を教示された。次の夜、おりんはしぶりがちな辰平を責めたてて楢山へ向った。辰平に背負われたおりんは一語も発せず、けわしい山道をひたすらに辿った。楢山の頂上近く、あたりに死体や白骨が見えはじめた。おりんは死体のない岩陰に降り立った。顔にはすでに死相が現われていた。おりんは辰平に山を降りるよう合図した。涙ながらに山道を戻った辰平は、七谷という所で銭屋の伜が又やんを崖からつき落そうとするのを見た。憤りが辰平の身うちを走り、又やんの伜に躍りかかった。銭屋の二人を呑んだ谷底には鳥が雲のように群っていた。雪が降り出した。辰平は禁を犯して山頂まで駈け登り、念仏を称えているおりんに「雪が降って来て運がいいなあ」と呼びかけた。おりんはうなずいて帰れと手を振った。--村に帰りついた辰平は、玉やんと並んで楢山をのぞみ見ながら、「わしらも七十になったら一緒に山へ行くんだね」とつぶやきながら合掌した。

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映画レビュー

3.0ラストカットに殉じた実験性

2023年3月31日
iPhoneアプリから投稿

深沢七郎の原作を舞台芸術のフレームで立ち上げた実験的作品。『カルメン純情す』の終始不安定なカメラワークや『野菊の如き君なりき』の回想シーンにおける疑似ホワイトビネットなど、木下は本作以前の作品においても随所に実験的な作風を取り入れてはいたが、ここまで大胆なのは本作ぐらいなんじゃないかと思う。

隅から隅まで人工的に設計されたセットと演出のもとで演じられる寒村の生活は、童話のように現実味を欠いている。「楢山様への謝罪」や「楢山参り」といった奇妙で残酷な風習を経れば経るほど、物語はより非現実性を強めていく。

次第に遠ざかっていく物語は、しかし最後の最後で現実へと投げ返される。寒村の朝焼けの光景から唐突にカットが切り替わり、信州の山奥を走る汽車と「姥捨駅」という駅名が映し出されたとき、童話じみた非現実的物語は現実の生々しい延長として受け手にアクチュアルな戦慄をもたらす。

ただ、最後の最後で一気呵成にひっくり返すという本作のやり方は、ともすれば粗悪なホラー映画のジャンプスケアと大差がない。木下惠介にしてはやや安直というか繊細さの欠けた作品だったように思う。フォーマットを舞台芸術に定めるという実験性に関しても、結局のところ最後のワンカットのための布石のためでしかなかったと思うと残念だ。

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因果

4.5生きる事とはこういう事と思わせられる

2022年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

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ツネ

4.5カブキ・スタイル

2022年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

今村昌平の『楢山節考』も素晴らしいが、もう一人の巨匠、木下恵介版を推薦したい。木下版は、奇抜で独特のムードがある。歌舞伎、文楽、能などの古典芸能を駆使し、世界に類を見ない。
低予算ながら、まるで土着演劇を観ているようだ。木下はこの独特の映画スタイルで、日本の「姥捨て」伝説を見事に復活させた。しかし、その非日常的な世界を明らかにした原作者・深沢七郎もまた、すごい。木下監督の演出力によって、このおどろおどろしい日本の風習は芸術作品に生まれ変わったのだ。

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茂輝

2.0ヘタでベタ。

2022年10月19日
iPhoneアプリから投稿

世界一嫌いだ、この婆さん。
古い価値にしがみ付き、悲劇の主人公然として恩着せがましく痛々しく、純粋被害者という甘美な立ち位置から、他者を黙々と責め続けて、露悪的に死ぬ。
そんな婆さんの話し。
名作らしいが、腹が立ち、且つツマラン。
田中絹代の演技もヘタでベタ。

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きねまっきい