妻の日の愛のかたみに

劇場公開日:

解説

池上三重子の同名手記を「香華」の木下恵介が脚色、「花実のない森」の富本壮吉が監督した純愛もの。撮影もコンビの小原譲治。

1965年製作/89分/日本
原題:While Yet a Wife
配給:大映
劇場公開日:1965年10月2日

ストーリー

昭和二十八年、水と白壁の美しい町柳川に、千枝子は嫁いで来た。夫正之とは見合いであったが、優しい正之との間は、町中の話題になるほどの、おし鳥夫婦であった。正之は中学校の、千枝子は小学校の先生であったが、千枝子は優秀な教師であるばかりか、よき妻、よき嫁であった。ある日、突然千枝子を襲った指の痛み、チョークをもつ手が、食事の仕度をする手が、しばしば激痛に、襲われた。やがてその痛みは全身を走り、全身の関節を侵していった。義母は千枝子の正体の知れぬ痛みが、過労が原因だと知らされ、世間態をはばかり千枝子の症状に困惑したが、義父は心から千枝子の病状を案じた。別府国立病院にリューマチスの患者として入院する頃、千枝子の身体は自分で動かすことの出来ない重症であった。だが正之と千枝子は、現代医学を信じ、一日に数通の愛の書簡を交わしながら、健康な日の訪れを待った。千枝子が、妻、女としての情を短歌に託したのはこの頃であった。入院して三回目の夏、千枝子は一時、退院したが、彼女の闘病生活に新しい苦悩が加わった。九州に根強く残る子なきは去るの風習、言葉にこそ出さぬが、周囲の眼は、鋭敏な千枝子の心をゆすった。私は夫の完全な妻ではありえない。私に出来ることは、正之を自由に解放してあげることだけ……毎夜、夫の姿を見て、病床に涙する千枝子に、正之は、人間の愛は精神で支えうると、励ましつづけた。離別を迫りながら、正之の許可がでないまま、千枝子は周囲の反対を押し切って、二度目の手術を決意した。自殺するに等しい手術、千枝子は、手術の失敗を祈った。麻酔がさめた朝、千枝子は、夫を解放出来ぬ自分に慟哭した。義父が死に、正之の留守になった家を、千枝子はたんかで里に帰った。半狂乱でかけつけた夫の側で千枝子は目をつぶったまま、「こうしていても、目にうつるのは、貴方の姿ばかりですよ」とつぶやいて、涙が一すじ頬をすべった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0若尾文子の闘病もの

2024年1月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

初見は角川シネマ新宿での『若尾文子映画祭』(2015年8月)、9年ぶり鑑賞。

この映画の舞台は「九州・柳川」。
大林宣彦監督の『廃市』でも舞台になった水の町。

カラー映画なので、若尾文子がとても綺麗である💕
序盤は「仲睦まじい夫婦物語」だが、全体的には「闘病もの」なので、重い話。

舟に乗った花嫁=千枝子(若尾文子)を追いかける男=正之(船越英二)が、この花嫁の夫になる男。
二人とも学校の先生をしながら、夫の父母と一緒に暮らしている。
妻の千枝子は、手製うどんを作ったり、井戸で洗濯したりと、朝から晩まで良く働く嫁である。
夫が「今晩は、君のうどんがたべたい」と道端で言って、生徒に『君のうどん』と冷やかされるシーンは微笑ましい😊

また、夫婦二人が田んぼで仕事をするシーンがあり、その帰り道で妻が「私、もう歩けない」と言って、船越英二が若尾文子をおんぶする。
このシーン、超うらやましい‼️‼️

そして、学校の数学教師をしている妻が授業中にチョークを落としたあたりから、病の影があらわれる。
身体じゅうの関節が痛くなり、別府の病院に入院。
難病のようだが、病名は不明。(リューマチという単語が一度出てくるが、医者は「関節が固まりはじめていて…」などと言うので、不治の病ということなのだろう。)

病気になって8年後(入院先の別府から戻って5年後)、夫の外出中に、妻は実家に帰ってしまう。夫以外の家族と本人=妻が決めたこと。
それを知った夫は、……といった感じで物語が進行する。

明るい夫婦の姿を描いた序盤は楽しいが、闘病風景ばかりになってからは暗い感じになる映画だった。

(※)初見時は未ソフト化作品だったが、その後DVD発売されて今回はDVDにて。DVDに収録されている予告編は「本編で使われなかった映像が多い」ので別テイクが見られて楽しい。

<映倫No.14103>

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たいちぃ

4.5純愛を貫いた夫婦の悲しい名作。

2021年8月21日
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西海一久
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