劇場公開日 1982年6月5日

「至福の映画体験を堪能しました」鬼龍院花子の生涯 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0至福の映画体験を堪能しました

2020年1月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

凄い作品です
これぞ映画を観たという、圧倒的な満足感を得ました

まず撮影が素晴らしいです
驚嘆する美しさです
これぞ映像美というものを堪能させて頂きました
レンズの味、光線の具合、光の反射のきらめき、空気感の出す奥行き、色彩の感覚、それらは肌感覚で室温まで感じるまでのものです
今ではリドリースコットの作品などの特徴として語られるような撮影の美しさですが、それより勝る程のものです
何より日本人の美意識に裏打ちされているものとして撮られているのです

そして本当に長年使い古されたとしか見えないセットと家具などの小道具類の美術の見事さ
古い箪笥の黒さ、傷の付き具合、埃の積もり具合
これほど見事なセットの仕上がりは他に観たことないものです

カメラの森田富士郎、美術の西岡善信とも大映京都撮影所の出身
そうそうたる名作の数々を担当されています
五社監督がこの二人を起用したのが、名優の配役より本作の成功のポイントかも知れません

そこにトランペットが主旋律を高らかに歌い上げる音楽の素晴らしさ
これこそ映画です!

音楽は菅野光亮
この人も音楽の巨匠で、作品の数々は名前は知らなくても聴いたことがない人はいない位と思います

仲代達也、岩下志麻の名演
夏目雅子の決め台詞!
彼女は本作に出演しなければこれほどの伝説の女優とはならなかったでしょう

もう何も言うことは有りません
岩下志麻の姐さん役にはシビレました

特に岩下志麻が演じるヤクザの正妻の歌が病気で死ぬシーンの名演は心に残りました
内股に彫られた刺青を手で隠し、そしてなぜます
ヤクザの女房となった半生の後悔と、鬼政の女房となった、一人の女としての幸せを見事に表現した演技でした
それが松恵を遠ざけていたことを詫びる次の台詞繋がり効果を更に劇的に上げています

鬼龍院花子の生涯
確かに題名通りの内容ですが、本当の主人公はこの岩下志麻が演じる歌という名の鬼政の正妻でした
夏目雅子の有名な決め台詞も、もとは彼女が演じる松恵が少女の頃に養母がその台詞を吐くのを目撃したという台詞なのです

松恵にはヤクザの家で育った負い目はあっても、それよりも養母のように鬼政の娘であることの誇りが圧倒的に上回っていたのです

花子を取り返しに殴り込む準備を調える鬼政に、般若が背中に大きく染め抜かれた白い半纏を養父の肩に掛ける松恵の姿は、養母の歌が蘇って侠客の夫に甲斐甲斐しくつくす姿そのものに見えるのです

つまり松恵は歌の娘として、本当に血の繋がったかのような母娘として、侠客の女房である母の姿を継承していたのだという物語だったのです

その決め台詞
舐めたらあかんぜよ!
その台詞はそれを見事に表現していました

もともと原作にも台本にも無かった台詞とのこと
五社監督の撮影現場での演出指導によるものと知りました
名監督の流石の演出です

もっともっと岩下志麻のヤクザの女房役を観たくなりました
なる程、極妻が人気シリーズになるわけです

知人に高知在住の女性がいますが、高知弁は本当にあのような言葉遣いなんですね
とはいえ普通の会話を交わしていると、恐さとかは無く、とてもチャーミングに聞こえるものです

でもやっぱり、一度きつく高知弁で叱られてみたいなあと思いますよねー

あき240