劇場公開日 1986年8月2日

「身内賛歌が作品へのスキを生み、「蒲田行進曲」の域には…」キネマの天地 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0身内賛歌が作品へのスキを生み、「蒲田行進曲」の域には…

2023年11月13日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

数え切れないほど鑑賞してきた
山田洋次監督作品の中でも、
私の中では繰り返し鑑賞するほど
「たそがれ清兵衛」や「息子」は
名作として別格だが、
当作品は2度目のTV鑑賞。

山田組オールスターキャストによる
映画界賛歌の趣だが、
主たる物語以外のエピソードが多過ぎて
本旨が薄れてしまった印象を受けた。

また、藤山寛美や笹野高史の登場する場面は
観客サービスなのかもしれないが、
「母と暮せば」での
浅野忠信の登場と同じように、
山田監督が後半生の作品で見せる安易な演出
に感じる。

解説によると配給は松竹だったものの、
4年前に深作監督が東映撮影所で撮った
「蒲田行進曲」を意識して
松竹がこの作品を制作したとのこと。
「蒲田…」が、基本は人情劇なものの、
ラストシーンでこの映画のからくりを見せる
ように結果的に映画界賛歌にするという
見事な裏技に比較して、
原作を改変してまでもキネマ界に寄せ過ぎた
「キネマの神様」も含め、
余りにも直接的に
身内の賛歌に持っていった結果、
手前味噌的なスキが生まれ、
山田監督のキネマ界賛歌両作品共に、
深作の「蒲田…」を
上回れない結果になったような気がした。

さて、
この作品のモデルと言われる田中絹代を、
1年後に今度は吉永小百合が演じた
市川崑監督作品「映画女優」を是非観たい
のだが、観る手立てが?

KENZO一級建築士事務所