酔いどれ詩人になるまえに : 新作映画評論

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映画

酔いどれ詩人になるまえに

劇場公開日 2007年8月18日
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酔いどれ詩人になるまえに 8月18日より銀座テアトルシネマ,シネセゾン渋谷にてロードショー

野卑なのに知的、ぶっきらぼうなのに愛おしい

画像1(C) 2005 MARK HIGASHINO PHOTOGRAPHY, INC

人はドラマを見るモノサシとしてリアルという言葉を多用するが、本当にありのままの生き様という奴は、かなり醜悪でみっともない。剥き出しの人間を書き綴って伝説となった米国文学の無頼派チャールズ・ブコウスキーの作品は、活字でこそ成立しても映像化には不安もよぎった。荒ぶる魂には共鳴するが、社会に背を向けた呑んだくれの日常を見せられても、たいてい目を覆うばかりだから。しかし、元アウトサイダーな中年男マット・ディロンの無骨な身体と暴発寸前の演技が、愛すべき佳作へと導いてくれた。

ブコウスキーが肉体労働しながら放浪していた日々をモチーフにした本作は、組織に耐えられず仕事を放り出し、金が底をつくまで酒と女とギャンブルの日々に溺れることの繰り返し。世の中に向かって心の底で「くそったれっ!」と叫びながら、ただ、自ら定めた表現の道“書くこと”だけは投げ出さない。自分の可能性を信じつつ、自堕落に生きるパンクな魂に惚れぼれする。野卑なのに知的、ぶっきらぼうなのに愛おしいのだ。

彼のどん底人生を見て、社会不適応者として眉をひそめるか、人生を諦めなかった荒くれ者としてリスペクトするか、観る者の価値観が問われている。常識に染まらず、自己を保ちながら、絶望だけはしない前向きな現実逃避の日々。やってられない格差社会の荒波を積極的に生き抜く上でも、ブコウスキー・イズムは素晴らしき手本になるだろう。

清水節

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ABOUT THE MOVIE

  • 酔いどれ詩人になるまえに 画像2
  • 酔いどれ詩人になるまえに
  • カルト的人気を誇る作家チャールズ・ブコウスキーの自伝的小説を「クラッシュ」(05)のマット・ディロン主演で映画化。自称“詩人”のヘンリー・チナスキーは、詩や小説を出版社に送り続けるが相手にされず、その日暮らしの生活を送っていた。バーで出会った女性ジャンと暮らし始めても、酒とセックスに溺れる堕落した毎日。そんな彼にも、“言葉”というたったひと筋の光があった……。監督は「キッチン・ストーリー」のベント・ハーメル。
  • 原題:
    Factotum
    監督:
    ベント・ハーメル
    脚本:
    ベント・ハーメル、ジム・スターク
    製作:
    ジム・スターク
    原作:
    チャールズ・ブコウスキー
    撮影:
    ジョン・クリスティアン・ローゼンルンド
    音楽:
    クリスティン・アスビョルンセン、トルド・グスタフセン
    出演:
    マット・ディロン、リリ・テイラー、マリサ・トメイ、ディディエ・フラマン、フィッシャー・スティーブンス、エイドリアン・シェリー、カレン・ヤング
    2005年アメリカ・ノルウェー合作映画/1時間34分
    配給:
    バップ、ロングライド
  • 8月18日より銀座テアトルシネマ,シネセゾン渋谷にてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C) 2005 MARK HIGASHINO PHOTOGRAPHY, INC

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