劇場公開日 2007年7月28日

天然コケッコー : インタビュー

2007年8月1日更新

くらもちふさこの少女マンガの世界を映画化、美しい風景の中で展開された恋愛にウブな女子中学生の主人公、そよの“初恋”に胸がキュンとなる、山下敦弘監督(「リンダリンダリンダ」)の青春映画「天然コケッコー」が絶賛公開中。四季折々の美しい風景の切り取り方、小・中学生のキャストの操縦法、原作マンガとの距離の置き方、そして主演の夏帆を美しく光り輝かせる方法など、これまでなかなか詳しく語られることのなかったこの映画のすべてについて、山下監督が語るロングロングインタビューだ。映画を見た方も、これから見る方も、最後までじっくり味わって読んでほしい。(聞き手:佐藤睦雄)

山下敦弘監督 ロングインタビュー

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■四季折々の美しく、かわいらしい風景も主役だった。

──島根県浜田市でロケされた風景に“磁場”があって、目を引き寄せられますね。あれだけの風景をロケハンするのは、大変ではなかったですか?

「最初に浜田へ行ったのは2年前の3月だったかな。それから月イチぐらいであそこを歩いたりして目星を付けましたね。栃木辺りにも行ったんですが、結局浜田で全部撮ることになったんです。本当は浜田にはもっと絶景があったんだけど、くらもちふさこさんの少女マンガを原作にしているので、小さな集落とか、“かわいらしい風景”にしようと決めたんですね」

懐かしい田舎の風景が連続する
懐かしい田舎の風景が連続する

──軒下に干してある洗濯物とか、自然の中の情景がいい感じでした。

「ストーリー的に四季を追わないといけなくて、クランクインの前に、冬と春の実景を撮り貯めていたんですよ。もちろん子供たちを撮る映画ですが、裏テーマでは自然の移り変わりも主役だと思っていたんで、ヌキ画はかなり撮りましたね。使っていないショットはヤマほどあります」

──例えば、単線の線路。あの線路は東京に続いているわけで、「スタンド・バイ・ミー」を彷彿させるいい情景でした。

「あの線路を見た瞬間、まさしく『スタンド・バイ・ミー』を思い描きましたよ(笑)。ただ、浜田の線路は、僕らが思う線路と違うんだよね。フェンスとかないし、おばあちゃんとかが生活のために横断していたり、みんなが海へ続く道を歩いていたりしてね」

山下敦弘監督
山下敦弘監督

──前作「松ヶ根乱射事件」といい、前々作「リンダリンダリンダ」といい、最近は都会的な風景が少ないですね。

「いろんな理由があるんだけど、要は東京で撮影すると、家から通わないといけないじゃないですか。あれ、イヤなんですよ(笑)。スタッフみんなと合宿したいから! 『リンダリンダリンダ』も、もっと東京寄りの埼玉辺りでも良かったんだけど、群馬にいい廃校が見つかったもんですからね。それ以上に都会を撮るって、自分ではまだピンとこないんですよね。それに合宿すると、映画以外考えられないじゃないですか。スタッフとの関係も密になりますしね。今回のように子供たちを撮るには、合宿させて仲良くさせるのが一番好都合だったかな。そりゃ、たまにケンカもあるんだけど、そういうのも含めて何か特別な人間関係を築けると思うんです」

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インタビュー2 ~山下敦弘監督 ロングインタビュー(2)
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