劇場公開日 2007年7月28日

天然コケッコー : 映画評論・批評

2007年7月31日更新

2007年7月28日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー

お下げ髪の少女の健康的な美しさがたまらない

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たまらなく幸福感にあふれた、日本映画の新たな傑作青春映画が生まれた。何といっても映像に強烈な“磁場”がある。海が、山が、太陽が祝福しているかのような美しい自然の中で、木々の緑も物干し竿の洗濯物も、幸せそうに風になびいている。

物語は、四季の移り変わりの中で、島根県浜田の山あいの分校に通う女子中学生が、高校へ進学するまでの1年半のエピソードを淡々とつむいでいるだけだ。大きな事件(プロット)といっても父の浮気疑惑、村祭り、修学旅行程度で、ほとんど何も起こらない。だが、グイグイと引き込まれていく。なぜ?

まさしく風景以上に魅惑するのが、「初恋のきた道」のチャン・ツィイーのように全編お下げ髪で登場し、“生”を謳歌するかのように大自然の中で躍動する、夏帆の健康的な美しさだ。「リンダリンダリンダ」の山下敦弘監督は、大人たちを出しゃばらせずに、彼女たちにのみ触覚的な視線を注ぎ、さらに自由に開放させている。浜田の自然と見事になじんでいる。

ウブなキスが笑いのタネになる。初キスの後、カレのコートを着て「わし、この匂い、好きじゃ!」と言い出す“天然ボケ”の少女に抱腹絶倒だ。自分の初恋にも気づかない無垢な少女を主人公に据えて、東京からの転校生との“初恋”をファルス(笑劇)と転化させる、山下監督の手腕が最高だ。

サトウムツオ

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