劇場公開日 2006年12月1日

「ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンド 大いにありです!」007 カジノ・ロワイヤル あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンド 大いにありです!

2019年4月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

007シリーズは何度か小さなリブートをしてますが、今回は本格的なリブートです
今までのシリーズ作品は全てご破算になり
一からの再出発です

ボンドは6代目ダニエル・クレイグに代わり、過去作と同じ役者はMのジュディ・デンチのみです
マニーペニーもQも役としても存在すらしません

ダニエル・クレイグのボンドは賛否が渦巻きました
彼はロシア人の様に見える
イギリス紳士にはとても見えない
第一小柄過ぎる
私も本作を観るまでは、そんな拒否反応がありました

しかし本作を観終わってみれば、ダニエル・クレイグのボンドはありです!
これこそリブートされたジェームズ・ボンドです
現代に実在するなら、こういう男だと納得のキャラクター造形にピッタリの男優です

70年代に生まれ、冷戦終結後に秘密情報部員になった男
それなりの教育は受けているものの育ちは決して上流階級の出身ではない
だから00資格を得て情報活動していても、旧シリーズのボンドの様に自然にドンペリ、ボランジェを自ら楽しむことはなく、ナッソーのフォーシーズンズのバーの様なところでもマウントゲイのソーダ割を頼む程度の庶民派です

情報を取るために接近した金持ちの美女に釣り合う様に、背伸びしてボランジェとベルーガのキャビアを頼んでみたのです

5つ星ホテルのカジノに繰り出す時のタキシードも持参して来たのは吊しのものです

冒頭の若い駆け出しのボンドが手柄を焦ったり、見栄を張って背伸びしたりしながら、本作の終わりには我々の知るボンドに成長しているのです
若手だったジェームズ・ボンドが伝説のジェームズ・ボンドになる、その過程を描いた映画と言えます

カジノのシーンが長いのは正にその瞬間だからこそです

そしてその前後の過程は彼の人間的な苦悩、身体的な痛みを描いています
ジェームズ・ボンドがアクションで傷を負い、血を流し、傷痕を残しながら無理にでも平気な振りをする姿を初めて目にすることになります

そのアクションは身体を張った身体的な痛みが伝わるもので、かっての作品のそれとは違う方向性を志向しているのもわかります
ボンドカーは登場しても秘密兵器は出ても来ません

セットも目をむくような敵の本拠地はなく、21世紀のフラット化した世界でも今なお残るスノッブな世界の再現に力をそそいでいます

そのなかで21世紀のボンドが5つ星のホテルのレストランでネクタイを外して食事をする姿は、21世紀に生きているジェームズ・ボンドを実感させてくれました

ダニエル・クレイグのジェームズ・ボンド
大いにありです!

あき240