劇場公開日 1989年12月16日

「現時点で映画館でここまで泣いた作品はありません」ニュー・シネマ・パラダイス septakaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0現時点で映画館でここまで泣いた作品はありません

2010年1月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

映画館で肩を震わせて
泣いたのは、人生で初めて。
もし、家で見ていたとしたら、
声を上げて嗚咽していたでしょう。

終演後、化粧室に
目に涙をためながら並ぶ
女性客の姿も、はじめて見ました。

帰途につくときも、
放心状態で、涙を堪えながら
歩道を歩き、涙が落ちないように、
列車の中では、ずっと斜め上を見つめ続けていました。

周りから見たら、
「この人、どうしたの?大丈夫か??」
挙動不審だったに違いありません。
花火大会があったらしく、着物姿の群衆の中に、
眼を真っ赤にした男が、なんだか涙を堪えている訳ですから。

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前半:幼少期
中盤:青年期
後半:壮年期
シーンが行き来する場面もありますが、
概ね、この流れで展開されてゆきます。

幼少期、青年期の、
ストーリー中盤まで、
母子家庭に育つ、
映画好きの1人の子供と、
映写機を回す1人の男を、
中心に展開され、家族との間にある「愛」や
子供と男との「父性愛にも似た友情」が
淡々と、描かれていきます。

火災による男性の失明など、大きな
出来事も含め、小さな出来事も、ありふれた
日常の断片として存在しますが、人生はわかりません。
そして、あなたの周りにいる誰かが、あなたは気づかない
だけで、そっと見守っていてくれていた。

終始、子供目線から描かれるココまでは、
観客側も「周り」が、どれだけの愛情をもって、
だれが、見守ってくれていたのか、全く気づきもしません。

ちなみに、ここまでの過程で、
過去の名作のワンシーンが、
いくつも使われているようでした。
古いこと+知識不足もあり、各作品に
ついては、よくわかりませんでした。
わかったのは、チャップリンだけでした。

また、男性の口から、数々の
映画で用いられた明言が引用されますが、
そちらも、いい言葉だな、と感嘆しましたが、
どの作品で、使われているのかはわかりませんでした。

ストーリーも終盤にむかう。男性は、
兵役も終え、成長した子供に告げます。
「街を出なさい。そして、もう街には
 戻ってくるな、電話もするな、手紙も出すな。
 おまえの噂を、耳にできるのを楽しみにしている」と。

街を出た彼は、それから30年間、
言いつけを守り、街には一度も戻らなかったのです。

街を出て30年後、母から電話が入ります。
「アルフレード(彼に戻ってくるなと告げた人)が
 亡くなった」と。

彼は、意を決して、30年ぶりに街に戻るのです。

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ここから、先は、なにを書いてもネタばれになると
思いますので、ストーリーについては、触れません。
記しておかずとも、この感覚が、失われるとは、
到底、考えられませんから。

ヒトツだけ触れますと、
早い人ですと、私を含め、
このあたりから、感動をして、涙し始めます。

ラストシーンは、BGMもよくって、号泣。
もうすすり泣くなんて、レベルではありませんでした。

やっぱり、映画って、イイ、最高ですね!!

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【補足、私事の記録】
 おそらく、私の現在の状況であったり、
 境遇に、重なり合う部分が多くて、
 余計に、感動をしたのもあると思います。

 ・戻って来て見えるもの、
  これは、すべてまぼろし、なの
 ・土地を離れる、辛さと戻りたくなる気持ち
 ・離れていても、変わらず注がれる母の愛情

 「退路を断つ」
 アルフレードは、
 「戻ってくる場所はない、それくらい強い
  気持ちを持たせなければ、サルヴァトーレは
  戻ってしまうし、成功もできない」と思って、
 心を鬼にしたのでしょうか。

 彼は、自分の死際に、
 「サルヴァトーレには、知らせないで欲しい」と
 家族に伝える、それくらい徹底していましたから。

 サルヴァトーレ視線からですと、
 「ふと立ち止まって人生を振り返ったとき、
  私、いままでなにやってたんだろ、って
  後悔したくない、なと。いい人生だったと、言いたいと」

 アルフレード視線からですと、
 「こんなに、深く愛してみたい、包み込んでみたい」

 この二つが、心に刻み込まれました。

 そうそう、もうひとつ不思議な発見が、
 「人って、心の底から感動すると、優しくなるんですね」
 やたらに席譲ったり、エレベーターのドアを開けたり、
 道を譲ってあげたり、自然にしてしまうのに驚きました(苦笑)

septaka